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「人」コラムールクセンブルクの横顔 – 特別篇(2)レナト・ファヴァロさん

「人」コラムールクセンブルクの横顔
特別篇(2):シェフ レナト・ファヴァロさん(Mr. Renato Favaro)

ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
ミシュラン一つ星に輝くイタリアン・レストラン「Favaro」のオーナー・シェフ、レナト・ファヴァロ(Renato Favaro)さん。昨年12月に首脳会談で安倍首相がルクセンブルクを訪れた際の公式晩餐会の料理を手掛けた方です。ディナーの一品に青森産の黒にんにくを使用した縁で、9月上旬に青森県、八戸で開催された「第1回世界黒にんにくサミット」に招聘されました。東京新聞さんのご厚意で取材に立ち会う機会を得ましたので、ファヴァロ氏のインタビューをお届けします。

記者(以下、Q):こんにちは。日本は初めてでいらっしゃいますか?
ファヴァロ(以下、F):初めまして。2回目です。初めての来日は2010年の春、観光で訪れました。ルクセンブルクに「KAMAKURA」という、大変素晴らしい日本料理店があるのですが、そこのご亭主のハジメさんに案内してもらって2週間滞在しました。京都、大坂、鎌倉、そして東京。お寺や美術館、街並み、本当に色々見て回りました。今回はビジネスで八戸を訪ねました。「世界黒にんにくサミット」にご招待いただき、そこで講演する機会を得ましたので。
Q:安倍首相が昨年、ルクセンブルクを公式訪問した際に黒にんにくを使ったお料理を振る舞われたそうですね。
F:はい、はるばる来てくださった方に、おもてなしの気持ちを表したかったので。ルクセンブルク政府から晩餐会の料理を依頼された時に「日本産の食材を使いたい」と打診したら快諾されまして、迷わず黒にんにくをメニューに入れました。
Q:どんなお料理なのですか?
F:オマール海老のラビオリですが、ラビオリのスタッフイングの一部として黒にんにくを入れました。そして、プレートに一片の黒にんにくを添えました。日本の食材ですよ、という意味でプレートのデコレーションに加えたのです。
Q:それが縁で今回の来日となったのですね。
F:首相がたいそう喜んでくださいまして。「遠い地で日本の食材を楽しめるとは予想外の驚きで、疲れも吹き飛んだ」と。黒にんにくは滋養強壮にも優れた良い食材ですからね。
Q:黒にんにくは、まだ日本でもそれほど知られていない食材だと思うのですが、ファヴァロさんは、いつから黒にんにくをご存知だったのですか?
F :10年以上前、たしか2004年か2005年です。パリのマルシェに日本のブースが出展していまして、そこで黒にんにくと出会いました。日本の農産物に興味がありましたし、黒にんにく自体が珍しいでしょう、「何だ、これは?」と試食させてもらって、もう一目ぼれ。ボンボンを食べているような、ドライ・プルーンのような。上質のバルサミコの味もしますよね。白にんにくの利点を凝縮しながらも臭みがない。とてもインスパイアされました。レストランでお出しするデザートにも使っていますし、私自身、毎日1~2片を食べ続けています。元気の秘訣です(笑)。
Q:まさしく、黒にんにくの「PR大使」にぴったりの方ですね!黒にんにく以外でお気に入りの日本の食材はありますか?
F :抹茶ですね。デザートに大活躍してくれます。それからゴマ油も使いますよ。今回、黒にんにくの生産農家さんも訪問しましたし、巨大なゴボウとか長芋とか、とても面白い食材に出会えました。黒にんにくもそうですが、日本の食材は質が素晴らしい。格が本当に高い。世界の良い食材、本物、を守っていく、そして世に広める、これが非常に大切だと考えています。旬の素材を使うことももちろんですが。
Q:なるほど。ファヴァロさんはルクセンブルクの料理人協会の会長でもいらっしゃいますが、協会の活動にもリンクしますよね。
F:その通りです。協会は30年前にポール・ボキューズ氏が設立しました。料理の素材、そして料理人としての職業を守ることが設立の趣旨です。今、我々が力を注いでいるのは、「無駄をやめよう、旬のものを食べよう」という啓発活動です。サステナブルであること、舌にも、身体にも良い物。これは今後、増々重要になっていくと思います。
Q:そうですね。今日はお忙しい中、お時間を頂きましてありがとうございました。
F:こちらこそ、ありがとうございました。

リストランテ ファヴァロ
Ristorante favaro
19 rue des Remparts, L-4303 Esch-sur-Alzette, Luxembourg
Tel. 54 27 23
www.favaro.lu

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「なぜイタリア料理の道を選んだのですか?」とお聞きしたら、「僕のルーツはイタリアなので」と明確なお答え。「オーセンティックなもの、本物を大切にしたい。それは他の文化を尊敬することにもつながります」と言葉を重ねるファヴァロさんの誠実なお人柄とトップ・シェフの矜持に非常に感銘を受けました。もちろん、ルクセンブルクへ愛も人一倍で、インタビュー語の雑談でLIEFはルクセンブルクの様々な情報を発信している、と話したら、「パリのエッフェル塔もアメリカのブルックリン橋もルクセンブルク(の鉄骨)製だって、ドバイの高層タワーもルクセンブルクのガラスが使われている、って皆さんにしっかり伝えてね!」。気さくでナイス・ルッキング。(ミーハーですが)いっぺんにファンになってしまいました。                                            (文責:事務局)