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「人」コラムールクセンブルクの横顔特別篇(3)料理研究家兼フードライター アン・ファーバーさん(Ms. Anne Faber)

ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
料理研究家兼フードライターとして、大活躍中のアン・ファーバーさん(Ms. Anne Faber)。2010年から開始したブログ「Ann’s Kitchen(http://anneskitchen.lu/)」は2013年にアメリカの「Food & Wine magazine」のデジタル・フード賞を受賞、その他、料理本の執筆やご自身のテレビ番組で様々な国の食文化を紹介されているチャーミングなルクセンブルク女性です。今回、テレビ番組の撮影で来日中のアンさんにお話を伺う機会を得ました。

事務局(以下、Q):こんにちは。お忙しい中お時間をとっていただきありがとうございます。アンさんの肩書きは何と紹介したらよいでしょう?フートライター?料理研究家?
ファーバー(以下、A):初めまして。アンです。そうですね、私はフード・ジャーナリストで、料理本を3冊出していて、それからテレビ番組のプレゼンテーター、TVシェフでもあります。今回、テレビ番組の取材で来日できて、とても嬉しいです。仕事もエキサイティングですし、友人たちにも再会できましたし。友達は東京の様々な場所に案内してくれています。
Q:日本には何度かいらしているのですか?
A:はい、今回が3回目です。初来日は9年前でした。2回目は、3年前、2015年でキルシュ大使にお招きいただいて、在日ルクセンブルク大使館でのナショナルデー祝賀会でルクセンブルク料理を振舞いました。そして今回、テレビの取材で。
Q:ご自身のテレビ番組ですね!もう少し詳しく教えていただけますか?
A:はい、番組はシーズン5回目になるのですが、今回は「Anne’s Asian Adventures」と題して、バンコク、香港、マカオ、そして東京をフィーチャーします。東京編は4つのエピソードで約20か所をご紹介します。放映は来年の1月予定です。
Q:ルクセンブルクのテレビ番組だから、日本で視聴することは難しいかしら?
A:オンラインで見ることができると思いますよ。英語での部分もかなりありますし。あ、英語のパートはルクセンブルク語の字幕付きです。(笑)
Q:是非、観たいです!アジアのお料理はお好きなのですか?
A:もちろんです!毎年アジアを訪れています。タイ料理にもはまっていますし、日本料理も奥が深くて。興味がつきません。日本の食文化との最初の出会いは「本」でしたけれど。
Q:本?実際に食べる前に、ですか?
A:ええ。子供の頃に読んだ本で子供が「おにぎり」を食べているイラストを見て、えっ!この三角形の面白いものは何?って(笑)。どんな味なのだろう?とか本当にイマジネーションが膨らみました。父が日本に出張することも多かったので、お土産の折り紙とか、日本の文化に触れる機会もありました。それで、小さな頃からずっと日本に行ってみたいと思っていました。
Q:なるほど。今のアンさんは日本の料理について、どんな感想をお持ちですか?
A:非常にリージョナルでシーゾナル、でしょうか。地域の食材を活かしたお料理が沢山ありますよね、私はまだ東京と京都しか訪れていないのですが、近い将来、日本の色々な所へ行って地元のお料理を楽しみたいです。今回はゴールデンウィークの直前に東京に到着したのですが、子供の日の柏餅や鯉のぼりのパッケージに入ったお菓子はこの時期に日本にいないと知りえなかったですよね。日本は本当に季節感を大切にしていると思います。
Q:ゴールデンウィーク前から滞在されて取材の準備をされていたのですか?
A:ええ。通常は撮影の5日前くらいにロケ地に入って、取材を受けてくださる方と打ち合わせしたり、周辺情報は集めたりするのですが、ゴールデンウィーク中の日本ではそういう訳にはいかなかったので、私のゴールデンウィークにもなりました。(笑)友人の伝手で、非常に興味深い方々にお目にかかったり、築地やデパ地下を探索したり。ちなみに撮影の期間は2週間ほどです。
Q:周到な用意をして撮影されているのですね!アンさんのゴールデンウィーク(笑)の成果は?
A:まずはデパ地下。友人の案内がなければ、多分、途方に暮れていたと思います。何を試したらよいのか、美味しそうなものがあまりにも沢山あって、でも何のお料理なのか、一見さんの私には実のところよくわからなくって。(笑)
Q:ヨーロッパとは違いますか?私はロンドンのハロッズの食品売り場が好きで、良く行きましたが。
A:ヨーロッパにもとても良いデリはありますが、数は非常に限られています。日本では本当に日々の生活の中にお惣菜がありますよね、どこのデパートにも、エキナカにもある。びっくりです。これはワンダーランドだと。(笑)あと、豚骨スープにルクセンブルクの伝統食材を合わせる方法を思いつきました。ルクセンブルク風ラーメン、作ってみたいと思います。
Q:ラーメン!良いですね。是非、レシピを開発してください。その他にルクセンブルクと日本の違いは何かありますか?
A:レストランや居酒屋の多くがオープンキッチンであること。シェフの手際も見ることができて、シェフとお喋りもできる。画期的です。ルクセンブルクではレストランの厨房はクローズドで、オープンにする場合はガラスでシールドしなければなりません。
Q:法の規制ですか?
A:そうです。
Q:ルクセンブルク料理のお話も伺いたいのですが、アンさんオススメのお料理は何ですか?
A:リースリングパイ(パテ・オー・リースリング)。これは、白ワインでマリネしたお肉を包んだ楕円形のパイで、白ワインのジュレが入っています。豚肉をスモークしたジュッド(Judd)もおすすめしたいです。ルクセンブルクの代表的なお肉料理で、そら豆を添えています。
Q:デザート系では?
A:私のおばあちゃんが得意だったオレンジクリームを日本でアレンジしてみました。普通はレモンジュースを入れるのですが、柚子ジュースを入れてみて。もう、大正解!で、友人たちに大好評でした。
Q:ああ、聞いているだけでお腹がグーグー鳴っちゃいます(笑)。番組でご紹介するお店について、差し支えなければ教えていただけますか?
A:素晴らしいお店が沢山あって・・・。迷いますね。えーと、そうですね、ミシュラン2つ星の傳(デン)は楽しかった!オーナーシェフのウィットに富んだサラダ。(スマホを取り出して)ほら、観てください。スマイルマークの人参に、リーフの上には蟻!まで。楽しいでしょう。日本料理のモダンなアプローチを探究なさっていますよね。非常に暖かく迎えていただいて、コラボしたいね!と盛り上がりました。お店の柱に私のサインも書きましたので、皆様が傳にいらしたときには探してみてくださいね!
Q:傳に行く楽しみがさらに増えました。(笑)もっとお話しを伺いたいのですが、時間が迫ってきました。今日はこれから富岡精肉店さんに行かれるのですよね?
A:はい、ルクセンブルク風のソーセージが日本で唯一入手できる場所、と伺っていて、今からワクワクしています。
Q:チューリンガーソーセージですね!LIEFのオフ会の際にもサーブさせていただいた事がありまして、大好評でした。
A:チューリンガーは、シャンパンと同じように原産地でないと名乗れなくなってしまったので・・・。
Q:そうなのですか!失礼しました。最後にLIEFの読者の方々へのメッセージをお願いします。
A:ルクセンブルクは小さな国ですが、びっくりするくらい寿司店が多いのです。ルクセンブルク人が日本食をいかに愛しているかの証左だと思いますが、もし、皆さんがヨーロッパ滞在中に日本食が恋しくなったら、是非、ルクセンブルクへいらしてくださいね!もちろん、ルクセンブルクの食もご堪能いただけると、とても嬉しいです。
Q:今日はお話しできて本当に楽しかったです。ありがとうございました。
A:こちらこそ、ありがとうございました。
Q:アンさんウェブサイト(http://www.anneskitchen.lu/)で日本でのご滞在でインスパイアされたお料理を拝見することを楽しみにしています。

***

その後、アンさんと一緒に富永精肉店さんまでお邪魔させていただきました。ロンドンでの学業の後はホテル・レストラン業界に進むか、ジャーナリズムに進むか迷ったとのことでしたが、フードジャーナリズムに進まれたことで、才能とパーソナリティが今のように花開いたと思います。Anne’s Adventuresの更なる展開を楽しみにしています。アンさんの著書やwebサイトの情報は以下からどうぞ!(文責:事務局)

著作
‘Home Sweet Home – My Luxembourg’
http://anneskitchen.co.uk/the-book-3/‘Barcelona, Istanbul, Berlin’ (the Luxembourg Book Prize 2015受賞)  http://amzn.to/1w89sly
‘Anne’s Kitchen – British food with a twist’ (the Luxembourg Book Prize 2014受賞) http://amzn.to/1hxKlD9
ウェブサイト
http://anneskitchen.co.uk
テレビ番組
http://anneskitchen.co.uk/tv-show/