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「人」コラム ‐ ルクセンブルクの横顔 (8)

「人」コラム ‐ ルクセンブルクの横顔 
第8回: サブリナ・オリビエリ・戸澤さん (Ms. Sabrina Olivieri Tozawa) ― 後編

ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
前回に引き続き登場いただくのは、ルクセンブルクの伝統行事についてLIEFのウェブサイトに定期的に寄稿してくれているサブリナ・オリビエリ・戸澤さん。昨年、ルクセンブルクに戻り、4歳の息子さんを育てながら高校教師としてフルタイムで働いているワーキングマザーです。

事務局(以下、Q):日本生まれの息子さんも、もう4歳。キンダーガーデン(幼稚園)に通っているのですか?
サブリナ(以下、S):いえ、まだプレスクールです。ルクセンブルクでは3歳から4歳がプレスクール、4歳から6歳がキンダーガーデン、そして6歳から小学校に通います。プレスクールは日にちを選択できて、私の息子は週に4回通っています。
Q:そうですか。では、プレスクールに行かない曜日は誰が彼の面倒を見ているのですか?シッターさん?
S:私の母です。一緒に暮らしているので。
Q:ああ、お祖母ちゃんがいれば安心ですよね。そこは日本と似ていますね。我が家も息子が小さい頃は夫と私、双方の母達がものすごく協力してくれました。
S:あと、私はフルタイムで勤務していますが、金曜日はお休みを取っています。ですから週4日勤務。その代りに月曜日などは授業のコマ数がびっしりでちょっと大変ですけど。
Q:わ、フレキシブル!柔軟性のある働き方っていいですね。もちろん、サブリナさんが今おっしゃったように、時間の調節は必要で、そこの部分の緩急の付け方は難しいと思いますが。あくまでも私見ですけど、日本は勤務時間に柔軟性が乏しいし、長時間職場にいることを「良し」とする風潮があると思います。残業する社員が真面目な働き者、みたいな。時短勤務をしているワーキングマザー達の話を聞くと、短時間勤務だからこそ密度濃く、効率的に働くことに注力はしているけれど、それでも早く帰ることに罪悪感というか、職場の周りの人に対して引け目を感じると。私自身の育児奮闘時代は20年も前の話ですが、まだそういう風潮が残っているのだな、とちょっと残念です。通勤時間を含めると1日の大部分が仕事がらみでしょう。
S:通勤。そうですね。でも、私、日本で通勤するのは苦ではなかったです。日本では通勤ラッシュアワーの時でもノー・プッシング、周りの人を押さないでしょう。私は以前ニューヨークにも住んだことがありますが、全然違いますよ。あと、きちんと整列して前の人から順序よく電車に乗る。日本人はなんてイージー・ゴーイングなのだろう、カリカリしていないな、と凄く感心しました。
Q:整列乗車ですね。日本人は列を作るのは得意かも(笑)割り込みとかする人はほとんどいませんよね。
S:素晴らしいことだと思います。
Q:息子さんのプレスクールには車で送迎しているのですか?
S:徒歩です。近くですし、歩くことが推奨されています。キンダーガーデンも歩いて15分くらいの所にあるのですよ。
Q:それはいいですね。私は海外の学校では、児童は車で送り迎え、またはスクールバスで通学と思いこんでいました。
S: 地域によるのでしょうね。
Q:そうですね。息子さんとは何語で話しているのですか?
S:ルクセンブルク語です。子供は色々な言葉をすぐピックアップしますよね。ルクセンブルクでは、まず、ルクセンブルク語を教え、小学校からはドイツ語も習います。そして、その後、フランス語。
Q:ああ、マルチリンガルはそうやって育成されるのですね。
S:もしも今後、彼が日本の教育を受けるとしても、ドイツ語やフランス語は私がホームティーチングするつもりです。子供は言葉を覚えるのも早いけれど、忘れるのも早いから。
Q:日本に戻る可能性もありますものね。サブリナさんは息子さんをどの国で育てたい?
S:マルチリンガルでいてほしいから、ルクセンブルクでのほうが育てやすいと思います。彼は非常に強い子で、好きなこと、やりたいことがはっきりしています。日本は強い個性に対する許容度は低いのではないかと思います。
Q:そうですね、モノカルチャー、モノリンガル、以心伝心、和を以て貴しとなす(笑)。
S:それから、地震のことがあります。彼が学校に行っている時に大きな地震があったら、本当に心配でしょう。2011年の3.11の時、私は東京の翻訳会社に勤めていたのですけど、棚から本とか落ちてくるし、あんな大きな揺れは生まれて初めての経験だったし、本当に怖かった。
Q:ルクセンブルクでは地震はない?
S:ないです。微震はあったかもしれないけれど、記憶にない。私、地震センサーがついているのですよ(笑)。震度3の揺れでも即、反応する。夫はまったく感じないそうですけど。
Q:揺れに対して?
S:はい。「え?揺れているって?本当?」(笑)。
Q:そうか、日本人の彼は地震に対してはセンシティブでないのですね。どんな方ですか?
S:強い人です。でも、その強さは日本人の強さ。穏やかでピースフルな人です。
Q:そうすると、息子さんの強さは?
S:私に似ているのかも(笑)。
Q:話は変わりますが、サブリナさんが思うルクセンブルク人のアイデンティティーまたはルクセンブルクの人達の気質は何でしょう?
S:そうですね。まずマルチリンガル。それからプライドがあります。あとはオープン・マインドで好奇心が強いことかな。人への対し方というか積極性は日本人とはちょっと違いますね。
Q:違いをもう少し詳しく教えていただけますか?
S:例えば、私の日本人の友達は、単なる知り合いではなくて、友達ですが、彼らは例外なく海外で暮らしてきた経験のある人達なのです。ずっと日本だけで過ごしている人達とはメンタリティが違うと思う。一般的な、つまり日本しか知らない、日本の方は外国人を怖いと思ったり、日本語は通じないだろうと思ったりしているのでしょうか、すごいバリアを感じます。閉鎖的で、入り込めない感じ。ルクセンブルク人は他の人に対して興味を持ちますけど、日本人は他人と係りを持つことに対して非常にナーバス(神経質)だと感じます。
Q:そうですか。なるほど。では、最後の質問です。LIEFをご覧の皆様に何かメッセージをおねがいできますか?
S:皆さん、是非ルクセンブルクに来てください!とてもピースフルな国です。ヨーロッパの真ん中だからパリからTGVで2時間あまり。私は、友人がルクセンブルクに遊びに来てくれた時は、必ずシェンゲン(国境を自由に行き来できるシェンゲン協定が結ばれた町)に案内します。シェンゲンは、私の家から車で20分くらいの所にある小さな町ですけれど、ドイツ、フランス、ルクセンブルク3国の国境が一度に目にできるのですよ。車でちょっと走ると、ドイツ、ちょっと戻るとフランス。面白いでしょう?あと、モーゼル川に近いので、美味しいワインも楽しめますし。
Q:ルクセンブルクのワイン、本当に美味しいですものね。
S:ええ、LIEFのウェブサイト用の7月の伝統にも書きましたが、夏は皆、野外でワインの試飲を楽しみます。是非、皆さんに訪れてもらいたいです。
Q:ああ。行きたいなぁ!気持ち良い空気の中で頂くワインは最高でしょうね。
S:お待ちしています(笑)。
Q:今日はどうもありがとうございました。
S:こちらこそ、ありがとうございました。

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4歳の息子さんを育てながら、フルタイムのお仕事もされているアクティブで好奇心旺盛なサブリナさん。理路整然とした彼女と話していると、ワークライフバランスを上手くとる為には、物理的・精神的な柔軟性に加え、時間を有効に使うための管理能力が不可欠、という思いを強くしました。日本滞在中に「にがり」を入手して「豆乳」と「にがり」で息子さんの好物の「豆腐」作りにチャレンジしてみてくださいね。 (文責:事務局)

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