people

「人」コラム ‐ ルクセンブルクの横顔 (1)

第1回: アレキサンダー・ワーグナーさん (Mr. Alexander WAGNER) ― 前編

ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
最初に登場いただくのは、筑波大学助教のアレキサンダー(愛称:アレックス)・ワーグナーさん。アレックスさんは宇宙物理学の研究者で、ルクセンブルク情報交流フォーラム(LIEF)の発起人代表です。

事務局(以下、Q):
こんにちは!まずアレックスさんの自己紹介をお願いします。
アレックス(以下、A):
こんにちは。アレキサンダー・ワーグナーです。筑波大学計算科学センターで宇宙物理理論を研究しています。 僕は、父がルクセンブルク人で、母が日本人。下に弟がいます。ルクセンブルクで生まれて6歳まで住んでいました。それから、高校まで香港やシンガポールで過ごし、大学はイギリス。リーズ大学を卒業しました。筑波大学は2011年からで、筑波に来る前はオーストラリアで研究をしていました。
Q: とてもインターナショナルなバックグラウンドですねぇ。ご両親はルクセンブルクで知り合われたのですか?
A: (オーストリアの)ウィーンです。母がウィーンに留学して住んだアパートに、偶然、父も住んでいて。それがきっかけだったそうです。
Q: そうですか。では、初来日は?小さな頃?
A: 0歳。母の里帰りの時が最初ですね。子供の頃は、クリスマスはルクセンブルクで過ごして、お正月は日本、というパターンでした。小学校の時は、ホリディで日本に来るたびに日本の小学校にも3週間くらい通いましたよ。すごく良い体験でした。
Q: なるほど。では、言葉はもちろん、日本の文化や風習も熟知していたわけですね。では、生活の拠点が日本になってから、あまり戸惑わなかった?
A: いえいえ、とんでもない。遊びで来るのと、仕事して生活するのは違いますよ。日常の生活の色々な事、例えば、クルマを買う、家賃を払う、銀行口座を作る、そういった諸々の事が新しい体験ですから。外国籍の人間が日本で銀行口座を作るのは、日本語の読み書きができないとかなり大変だと思うな。もっと大変なのはクレジットカードを作る事だけど。
Q: え!国立大学の先生でもクレジッカードを作るのは大変なのですか?外国の方が個人名義で家やアパートを借りるのは大変だという話は色々聞いているけれど。
A: そうですよ。理由はわからないけれど、クレジットカード、厳しいですよ。僕の場合は5勝5敗(笑)。海外で作ったクレジットカードも持っていたけれど、日本の銀行口座から引き落としがあるほうが便利ですからね。それから、職場の環境もやはり違いますよね。仕事のやり方とか、上下関係とか。
Q: 根回しとか!仕事の流儀というかニュアンスは、日本は独特かも。そのお話、後で詳しく教えてください。日常生活で困った時は、誰に相談しているのですか?お母さま?
A: 母からもアドバイスをもらいますが、僕の奥さんは日本人なので、彼女に聞きますね。細々したことは彼女がクリアしてくれたりして。そういう意味では、僕はかなり恵まれていますね。
Q: 小さな頃から日本に親しんで、日本語がこれだけ流暢なアレックスさんでも、日々の生活では、やっぱり戸惑うことがあるのですね。でも身近に協力はサポーターがいるのは何よりですね。奥様とは日本で知り合ったのですか?
A: いえ。イギリスです。リーズの大学で。
Q: なるほど。ちょっと話題が変わりますけれど、ルクセンブルクの人はほとんど例外なくマルチリンガルでしょう。アレックスさんは、ルクセンブルク語の他に、日本語、ドイツ語、フランス語、英語を操られるけれど、何語が一番得意なのですか?
A: うーん。何語かな。中学・高校はインターナショナル・スクールで、ドイツ語がメインだったから、昔はドイツ語が一番馴染みのある言葉だったのだけれど、今は英語を使う頻度が圧倒的に多いから、英語かな。フランス語は読むのはオーケーだけど、話すのはタドタドしいかも。反対に日本語は話すのはオーケーだけど、難解な長文は勘弁してくれぇと思います。(笑)
Q: そうですか(笑)。ご家庭では、何語で話していたのですか?
A: 父とはルクセンブルク語、母とは日本語。で、家族みんなで過ごしている時はドイツ語です。母はルクセンブルク語も話すけれど、ドイツ語がペラペラだから。
A: ワーグナー家の公用語はドイツ語だったのですね(笑)。高校卒業後は、英国の大学に進学されたのですよね。大学時代に言葉で苦労はしませんでしたか?
Q: 英語はインターナショナル・スクールでかなり徹底的に習ったから大丈夫でした。ネイティブの先生がいらして、とてもレベルが高かったですよ。大学で学ぶ時に言葉で苦労した記憶はありません。ちなみにインターナショナル・スクールの座席配置はU字型なのですよ。日本とは違いますね。
A: スクール形式(と日本では言われていますが)の列並びではないのですね!
Q: そう。U字型です。先生も同等に視線が配れるし、皆、同じ立場という感じがするでしょう。だからディスカッションも自然にできる。これはすごくいいと思う。日本は大学の教員の会議でも机が整列していて、偉い人は前のほうから座って、ジュニアクラスは最後尾の席という不文律があるから、活発な意見の交換は難しい。
A: 確かに。私(インタビュアー)は学生時代、授業では先生の目の届かないように後ろの席で小さくなっていた・・・。日本では会議で偉い人が前から座る、というのは職場の序列の問題だと思うのですが、先ほど仰っていた仕事のやり方の違いを教えていただけますか?
Q: 僕が感じたのは、上の立場いる人達が、概して、目下の人のスキルを尊敬していない、ということ。下の人の意見を聞かない、自分と違う意見は潰す。一人一人が違うこと、違うことは良いことと思うこと、この考え方がとても少ないように思います。そこが大きな違いかな。
A: ああ、仰っている意味、良く分かります。日本ではいまだに会議で発言すること自体が少なからずタブー視されているし、上司と違う意見を述べたら「あいつ、刃向かった!」なんて感情的に思われたりすること、ありますからね。一般的に言って、日本人は討議とか論議は苦手な民族ですよね。「和を以て貴しとなす」(笑)。今は小学校からディベートの授業が行われているようですけれど。
Q: それぞれの違いを認めることが個々人を尊重することだと思うし、とても大切なことだと思います。日本の人達は、知り合いになると、ひとりひとりの個人は優しくて話しやすい。けれども、人とのコミュニケーションではギャップがありますね・・・(以下、次号)

***

まだまだ話がつきませんが、日本人とルクセンブルク人のコミュニケーションの方法の違いやルクセンブルク人のアイデンティティについて、アレックスさんにとっての日本の魅力、ルクセンブルクの魅力については、後編でご紹介します。どうぞお楽しみに!     (文責:事務局)

「人」コラム ‐ ルクセンブルクの横顔 第30回:マーク・シェーファーさん(Mr. Marc Schaefer) ― 後編