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「人」コラム ‐ ルクセンブルクの横顔 (2)

第2回: アレキサンダー・ワーグナーさん (Mr. Alexander WAGNER) ― 後編

ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
前回に引き続き、筑波大学助教(宇宙物理学の研究者)でルクセンブルク情報交流フォーラム(LIEF)の発起人代表でもあるアレキサンダー(愛称:アレックス)・ワーグナーさんのインタビューをお届けします。ルクセンブルク人のお父様と日本人のお母様の間に誕生したアレックスさん。日本語は堪能ですし、日本の生活文化にも通じていらっしゃいますが「里帰りで遊びに来るのと、仕事を持って生活するのは違いますよ」と仰います。今回は、アレックスさんが感じる両国の違いやコミュニケーション、そしてルクセンブル人のアイデンティティについて語っていただきます。

事務局(以下、Q):
さて、0歳から日本に里帰りして、日本の文化や風習にかなり馴染んでいたアレックスさんでも日本の仕事の流儀には面食らったことがあるそうで、「日本の人達は、知り合いになると、ひとりひとりの個人は優しくて話しやすい。けれども、人とのコミュニケーションではギャップがありますね」と仰っていましたが、その点についてもう少しお話しいただけますか?
アレックス(以下、A): 例えば、東京は知っている人が誰もいなかったら、淋しい街だと思います。人が多すぎるから、周りをシャットアウトして、他の人達に声をかけない。日本人はシャイだから。仕事やサークルで知り合うと、個人的には優しくて話しやすいのだけれど、知り合い以外には無関心。
Q: そうですね、すれ違う人と目があってニッコリする、こちらから話しかけるって都内では稀なケースかもしれません。地方に行くと「どこから来たの?」と気さくに話しかけてくる“おばちゃん”もいるのですけど(笑)。日本人は知らない人に話しかけるのは苦手かもしれません。パーティでも知っている人同士で固まってしまうか、ポツンと壁の華になってしまうこと多いです。ルクセンブルクの人達はシャイではない?
A: ルクセンブルク人は基本的に「田舎の人」です。素朴というか、単純で純粋。シンプルだと思う。ラフな所があって、話すとストレート。でも攻撃的ではないですよ。優しいし、ユーモアもある。ちなみに、一般的に手が大きいです。力強い手をしている。「農業の手」(笑)。
Q: 手、ですか?それは注目したことなかったです(笑)。ルクセンブルクの人達について、もう少し教えてください。
A: ルクセンブルクの人達は、ルクセンブルク独特のもの、例えば街とか村の雰囲気、に誇りと愛着を持っています。フランスやドイツそれからベルギーと似ているところもあるけれど、どちらでもない。ルクセンブルクならではの物をとても大切にしています。

Q: アイデンティティに繋がっていますね。
A: はい。僕は、日本の食事や山歩き、温泉文化も大好きですが、ルクセンブルクの森や自然の中を歩く時、ルクセンブルク独特の料理を食べる時、そしてルクセンブルク語を話す時、本当にルクセンブルク人で良かったな、と思います。ルクセンブルク人は、よく”Mir bleime wat mir sin” と言いますよ。英語にそのまま訳すと”We remain as we are”ですけれど、つまり”We want be remain as we are”、「ルクセンブルク人としていたい」。ここに、ルクセンブルクの矜持があると思っています。
Q: なるほど。それはとても深いお話ですね。参考までにお聞きしたいのですが、ルクセンブルク独特の食べ物で、日本の皆さんに試してもらいたいお薦めは何ですか?アレックスさんの大好物でも構いません。
A: そうですね、僕の好物は「ウサギのシチュー」と「カフケース」。美味しいですよ。
Q:  「カフケース」? 
A: チーズです。”Kachkeis”と書きます。ペトペトしていて、トーストに薄く伸ばして食べると、ホント、際限なくなります(笑)。
Q: お取り寄せ便があるか、探してみます!ところで、アレックスさんは、仕事がOFFの時は日本でどう過ごされていますか?
A: テニスですね。僕、テニスが趣味で、日本でサークルに入っています。今夜もテニスに行きます。
Q: 大学関係の?
A: いいえ。学校とは違うグループ。ネットで調べて、コンタクトして、メンバーになりました。日本はテニスコートを取るのが大変ですよね。申込みに抽選。ルクセンブルクでもテニスは盛んですけど、コート取りの苦労は無いです。
Q: ルクセンブルクでは、ラケット抱えてふらっと行ける。いいですね。
A: そう。気軽に(笑)。日本のサークル活動も面白いです。色々な人達と知り合えるし、他の人達の生活を知るきっかけにもなるから。楽しいですよ。
Q : 職場以外にも輪が広がっていくのは何よりですね。日本の生活の中で、ルクセンブルク人で良かったな、と思うことはありますか?下世話ですけど、ルクセンブルク人でラッキーだったな、得したな、とか。
A : 「ネタ」になります。
Q: 「ネタ」ですか!?
A : そう。だって珍しいでしょう?ドイツ人とかフランス人とかという馴染みのある国の人ではないから、「それ(ルクセンブルク)はどこだ?」から会話が始まる(笑)。「あ、昔ベネルクスって習った記憶がある」とかね。あと、日本に住んでいるルクセンブルク人は数が少ないから、在日ルクセンブルク大使館のイベントに呼んでもらうこともラッキーかな。アットホームですごく良いです。ここでも輪が広がるし。
Q : 日本での生活をエンジョイしていますね。アレックスさんはLIEFの発起人代表でもあるのですが、LIEFにこれからについて、そして、このサイトをご覧の皆様にメッセージをいただけますか?
A : このサイトを色々な人達に見てもらって、どんどん輪を広げていきたいし、色々な情報が集まるオープンでアクティブなものにしたいです。ちょっとした疑問や質問も大歓迎なので皆さんからの質問も増えたらいいな、と思っています。将来的にはルクセンブルク国内の団体とも交流していきたいですね。
Q : LIEFの輪、大きく広げたいですね。まずは、皆さんの投稿、お待ちしています!今日はお忙しい中、色々なお話を聴かせていただきありがとうございました。
A : こちらこそ、ありがとうございました。

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礼儀正しく、明るく、オープンなアレックスさん。職場やサークルでの人脈の広さ、人望の厚さが頷けます。5月からはパリで研究生活が待っている多忙な時間を割いてインタビューに答えてくださいました。目下の悩みは「夏に誕生予定のベイビーの名前」だそうです。
皆様、日本でもインターナショナルでも通じる素敵な名前を思いついたらLIEFに投稿してくださいね。インタビュー・シリーズへの皆様からのフィードバックも大歓迎ですので、ご意見、ご感想も是非お寄せください。(文責:事務局)