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「人」コラム ‐ ルクセンブルクの横顔(3)  

第3回:ステフィー・ウォラックさん (Ms. Steffi Wolak) ― 前編 

ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
今回、登場いただくのは、東京の人材紹介会社にお勤めのステフィー・ウォラックさん。奈良女子大学で学び、関西での生活のほうが東京での生活よりも馴染みがある彼女、大阪出身の彼と昨年12月に結婚したばかりの新婚さんです。

事務局(以下、Q): こんにちは!まずステフィーさんの自己紹介をお願いします。あと、日本に来たきっかけも教えてください。
ステフィー(以下、S): こんにちは。ステフィー・ウォラックと申します。1988年生まれで、ルクセンブルクの南部、自然以外は本当に何もない、馬と牛がいっぱいの地方の出身です。ストラスブール大学で日本語を専攻して、2009年に初めて日本に来ました。その時は東京で1か月ホームスティして日本語の勉強。その後、奈良女子大学の大学院で言語学のマスターを取得し、今は東京で暮らしています。
Q: では、大学に入学するまでは日本に馴染みはなかった?
S: まったく知りませんでした(笑)。もともと言語学に興味があって、ルクセンブルクはマルチリンガルですけれど、馴染みのない言葉をやってみたいな、と。ストラスブール大はロシア語と日本語のコースがあって、どちらにしようか考えたのですが、ヨーロッパの言語から遠い方が良いかなと思って、日本語を選択しました。
Q: そうですか。それで、2009年に始めて日本に来られたのですね。
S: ええ、日本語の勉強のために。東京の語学学校に通って勉強ばっかりしていました。2010年に再来日して、2か月間バックパッカーしました。東京から九州まで。前年は東京だけで、それも勉強ばっかりしていたので、東京以外の土地を見てみたいと思ったのです。日本の伝統とか人とか風土とかを知りたくて。色々な大学の下見も兼ねて。
Q: なるほど。では、日本で学ぼうというつもりもあった?
S: はい、せっかく勉強しているのですから。色々な方のお話も聞いて、自分の目で見て、関西は日本古来の伝統があるし、とてもひかれました、それで奈良女を志望校にして、文部科学省のプログラムに応募しました。
Q: わ!優秀‼ 国立大学の試験だから、もちろん日本語で受験したのですよね?
S: はい、日本語です。頑張って勉強しました。幸い合格して2011年の10月から奈良での学生生活が始まりました。
Q: 日本の生活にすんなり溶け込めましたか?
S: やっぱり、最初は大変でした。私はまだあまり日本語ができなかったし、地方だと英語もそんなに通じないし。食べ物も全く違うでしょう。豆腐とか納豆とかお寿司とか。初めて口にするものばかりで、まったくダメでした。今では大好物なのですが(笑)。
Q: ああ、本当に食べ物は大事ですよね。納豆も大丈夫なのですか?私、海外の方は、納豆は無理だと思っていました。関西人も納豆は食べないでしょう?
S: 私の夫は大阪出身ですけど、彼、納豆食べますよ(笑)。
Q: あら!納豆OKですか!お二人のなれそめは、後でゆっくり伺うとして(笑)。日本の生活にすっかり溶け込んでいらっしゃるようで何よりですね。
S: 東京は、まだ慣れない事が多いです。東京に来て2年になりますが、テンポも速くて、皆、急いでいて、ストレスフルでしょう。満員電車とか。仕事の拘束時間も長いですよね。 
Q: では関西の方がしっくりくる?
S: そうですね。もちろん、学生生活と社外人生活の違いもあるかもしれませんが。奈良に住んで、京都や大阪によく遊びにいきました。伝統があるし、お寺や神社もごく身近にあって。人も(東京と関西ではキャラクターが)違うように思います。
Q: もしかして、関西弁のほうが得意とか?
S: そうかも(笑)。関西に行くと自然に関西弁になってしまいますね。今年のゴールデンウイークも大阪へ行って、岐阜の白川郷にも行きました。素晴らしかった。あの独特の家屋と緑。畑があるとほっとします。東京は身近な緑は公園くらいでしょう。私、公園は自然ではないと思います。
Q: ステフィーさんにとって自然は不可欠なものなのですね。
S: はい。自然の中にいること、自然と一体感を持つことは私にとってとても大切です。自然の中で、たった独りでいると自然が聞こえます。日本の人達がルクセンブルクに来られた時は是非、自然の遊び方を経験してほしいです。遊び方というか「何もしないで自然と共にいる」という事ですけど。
Q: ああ、それは多くの日本人にとって、かなり苦手なことかも。何もしないと落ち着かなくなる(笑)。
S: 日本人は「何か」したがりますよね。友達と集まったら「じゃ、カラオケ行こう」とか。ルクセンブルクでは、友達とお喋りするだけ、ただ一緒にいるだけ、というパターンが多いのですけど。日本の人は「何かしないといけない」と思ってしまう(笑)。まあ、自然の中でサイクリングするとかクライミングすることはルクセンブルクでも盛んですけど。
Q: その他にステフィーさんが感じる両国の国民性の違いは何かありますか?
S: そうですね、日本、特に東京ではスモールトーク、ちょっとした会話が無いですよね。例えば、エレベーターの中で今日は天気がいいですね、とか乗り合わせた人同士が話さないし、道ですれ違った人にニッコリしたりしない。それから、日本の人達はあまりパーソナルなことを話さないように思います。すごく守りに入っている感じ。例えば、仕事の話題の時に、今どこにお勤めなのかを教えてはくれない。何とか業界です、とか何とかの仕事をしています、とは答えてくれても会社名を口にしないです。職場で私の質問は立ち入りすぎると言われる事があります。ルクセンブルクでは、結構、直接的に根掘り葉掘り聞くのが普通なのですけど。例えば、私の夫のことも、何をしているの?どこに努めているの?何歳?どんなルックス?どうやって知り合ったの?とか。
Q: ステフィーさんが、関西のほうががしっくりくる、という意味が少し分かりかけてきたかも。私(インタビュアー)の偏見かもしれないけれど、少なくとも私の知っている限り、関西出身の人のほうが質問の仕方が直接的だと思う。「そのセーター良いね、なんぼした?」って(笑)。あ、これは私の友人(大阪在住)が良く口にする言葉なのですが。
S: はい、関西は、かなりオープンでパーソナルだと思います。
Q: では、とってもパーソナルな質問をしても良いですか?大阪出身の旦那様との出会い、教えてください!・・・(以下、次号)

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自然、そして人とのふれあいをとても大切にしているステフィーさん。彼女のハートを見事ゲットした旦那様とのなれそめや、新婚生活で苦労したこと、これからの生活への豊富など、後編はかなり「立ち入った」お話をお伝えしたいと思います。どうぞお楽しみに!
(文責:事務局)