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宇宙の話―HAKUTOプロジェクトの袴田さんとルクセンブルク

少し前、auのCMで「ちょっと月面走ってきます」というキャッチコピーとともに、ローバーが実験室から走り出す映像が流れましたね。auが支援するこの民間による初の月面探査を目指すプロジェクト「HAKUTO」を率いるispace社CEOの袴田武史さんとそのチームが、ルクセンブルクの宇宙イベントで大活躍されました。「Space Forum 2016」(http://www.spaceforum.eu/)は欧米を中心に宇宙活用に関するトップレベルのスピーカーを一堂に集め、最先端の話題を2日間のセッションで議論するもの。特に注目された『宇宙資源開発(space mining)』セッションにアジアから唯一登壇したのが袴田さんです。なんといっても日本は世界有数の宇宙大国。宇宙資源開発分野でもJAXAのはやぶさが小惑星サンプルを地球に送り返すという偉業を成し遂げています。講演会場前の展示スペースに設置されたispace社ブースにはテレビで見たあのローバーが!

Space Forum終了後、HAKUTOチームをワイナリー訪問ツアーにお誘いしました。モーゼル川の対岸にドイツの村が見渡せる小高い丘の上に建つワイナリーで試飲をしながら袴田さんに少しお話を伺いました。

― 失礼かもしれませんが、初めて東京で袴田さんにお会いした時に、あまりに謙虚なお人柄でびっくりしました。宇宙ベンチャーのCEOというと、かなりアグレッシブな人を創造していたものですから。

袴田「一部の特別な人達だけが宇宙を目指すというイメージがもともと好きではないんです。もっと普通の感覚の人が宇宙と関われるような世界を目指したいというか。なので、HAKUTOのロゴも「宇宙感がありすぎる黒や青はやめて」とデザイナーに注文し、今の色(注:赤&グレー)にしました。今日のプレゼンスライドもあえて白を背景にしています。」

― そうだったんですね。たしかにHAKUTOのロゴはとても温かみがあって、年齢性別を問わず親しみが持てます。袴田さんには、不思議と「この人を応援したい、一緒に何かがしたい」という気持ちを起こさせる力がおありですね。個人的には、こんなリーダーに成功してほしいと思います。

袴田「ありがとうございます。」

― 今回、ルクセンブルクで開催のSpace Forumに参加されていかがでしたか?

袴田「とても多くの人とコンタクトができました。我々にとって、宇宙資源開拓を代表するベンチャーであるディープ・スペース・インダストリーズ、プラネタリー・リソーシズに続いて登壇できたことは重要でした。」

― 日本の存在感も示すことができ、素晴らしかったです。

物静かで控えめな袴田さんに勝手に熱いエールを送るうち、テーブルに移動することになり会話は終了。ブドウ畑と川沿いの村に夕日が落ちる風景を眺めながら、ワイナリー訪問客どうし大勢で大いに盛り上がりました。

Space Forumの基調講演者の一人、ジャン・ジャック・ドルダン元ESA長官は「宇宙開発は、人々に生活水準や、安全、経済面の向上をもたらし、地上で暮らす我々の生活に資するものです」と述べていました。ルクセンブルクも今、国を挙げて宇宙資源開拓に乗り出そうとしています。袴田さんのお話を伺い、遠い宇宙と普通の私たちの生活がつながる可能性を実感できたのでした。