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「人」コラム ‐ ルクセンブルクの横顔  第35回:アルミア・セリモビックさん&ローラ・コンソリさん(Mr.Almir Selimovic & Ms. Laura Consoli) ― 前編

ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
今回は、この2月から日本企業で新社会人生活をスタートしたアルミア・セリモビックさんと彼のパートナーで、4月中旬までインターンとしてルクセンブルク大使館にお勤めされていたローラ・コンソリさんのお二人にお話を伺います。

事務局(以下、Q):こんにちは、お忙しい中、ありがとうございます。今日は宜しくおねがいします
ローラ(以下、L):こんにちは。
アルミア(以下、A):こんにちは。こちらこそ、よろしくお願いします。
Q:まずは、アルミアさんから自己紹介をお願いします。
A: アルミア・セリモビックです。この2月1日から、三菱ふそうに勤務しています。
Q:トラックの?技術系のお仕事ですか?
A:はい、トラックやバスの。会社の正式名称は三菱ふそうトラック・バス株式会社です。仕事の内容はエンジニアリングではなくて、グループ管理部門で財務のデータ分析をしています。
Q:なぜ、日本の会社に入られたのですか?
A:日本が好きで、日本で働きたいと思ったから。もっとも、三菱ふそうはドイツのダイムラーの資本が89%以上入っていますので、100%日本企業ではありませんけれど。僕の部署は、マネージャーがインド人で、スタッフも中国、インドネシア、台湾、ドイツ、アメリカと様々な国の人たちで構成されています。もちろん日本人社員もいますけれど、僕の部署の中ではマイノリティ(笑)。まあ、会社全体では圧倒的に日本人が多いですけれども。経理部などは日本人社員ですし。
Q:入社のきっかけは?
A:大学時代のインターンです。フランスのストラスブールの大学で経済学と経営学を専攻していたのですが、授業の一環として、フランス以外の国で、企業のインターンシップを取らなければなりませんでした。ルクセンブルクでインターンをするという選択肢もありましたが、この機会を活用して日本に行こうと思い、ネットで色々調べて。2017年の4月から9月までの6か月間、三菱ふそうでインターンとして働いて。それが縁で入社しました。インターン時代のスーパーバイザーが今の上司です。
Q:では、初来日は2017年?
A:いえ、2016年に休暇で2週間ほど日本を旅行しました。ローラと一緒に。
Q:あ、そうなのですか?お二人は長いお付き合いなの?
L:15歳か16歳かな。高校生の時からです。私は今、フランス北部、シャンパーニュ地方にあるランス大学の大学院に在籍していますが、大学はストラスブールでしたので、当時は彼と一緒でした。
Q:素敵ですね。では、ローラさん、自己紹介をお願いします。
L:ローラ・コンソリです。ランスの大学院で地政学(Geopolitics)を学んでいて、この夏に修士号を取得予定です。
Q:修士論文はもう出来上がっているのですか?
L:いえ、まだ完成はしていません。論文には大使館でのインターンシップで得たことも入れ込みたいと思っています。イベントのオーガナイズのお手伝いをしたり、会議のレポートを書いたり、色々な方々にお会いする素晴らしい機会を得ました。専攻の地政学では国際関係は大変重要ですので、その意味でも非常に有意義な経験でした。
Q:ルクセンブルク経済省が始めたインターンシップ? 有給のインターンシップは珍しいな、と注目しているのですよ。
L:いえ、私がアプライしたのは外務省のインターンシップで、残念ながら(笑)経済省のプログラムが開始される前でした。ビザの関係でインターンとして働くことができるのは3か月以内なので、2月から4月まで勤め、その後は一旦、日本を離れます。論文を完成させなければなりませんし。父がタイにいるので、日本から真直ぐ帰国せずに、まずはタイに行って父と過ごそうと思っています。
Q:大学院を終えた後は日本に戻ってきますか?
L:ええ、そうしたいです。できれば、日本で働きたいです。でも、日本語を習得しなければなりませんから、語学学校に通うかもしれません。日本で暮らす以上、日本語を話すことは最低限の礼儀だと思うので。
A:僕も日本語をブラッシュアップしたいです。大学で日本語の初級クラスを取っていましたけれど、職場でも日本語を使う機会がほとんどなくて、まだまだなので。幸い、会社で日本語講座が開かれるそうなので、仕事の時間をやり繰りして受講したいと思います。
Q:お二方とも日本が好きと言ってくださって、嬉しいです。そもそも何故、日本に興味を持ったのですか?
L:私は、アルミアと一緒に日本に旅行をしたのがキッカケですね。実は日本のことはまったく知らなくて、最初、彼から日本に行こうよ、と提案された時は躊躇したのですが、まったく知らない状態で訪れた国を大好きになることってあるのですね。
A:僕はアニメがきっかけですね。10歳くらいの時からワンピースとかナルトとか、日本の漫画を通じて、日本という国に興味を持ちました。それで、2016年にローラを誘って日本を訪れて、期待通りというか、期待以上で。漫画でみたのと同じ風景だ!とか。交通機関は便利で効率的だし、日本の人たちは親切だし。
L:そうそう。フレンドリーで、人が困っているときに助けようとしてくれる。お互いに敬意をもって人に接していることは素晴らしいと思います。スーパーマーケットで店員さんが「ハロー」って言ってくれるでしょう。そういう何気ないことにとても感動しました。ルクセンブルクでは、店員さんの態度はあまり良くないことが多くて。挨拶されたことなど、ほとんどないです。
Q:そうなのですか?
A:そうですよ。日本の店員さんとは大違いです。レジの前で、お客さんを放っておいてスタッフ同士でお喋りしていたりして。店員さんの態度については、ルクセンブルクだけの問題ではないですけれど。あと、安全ですよね。スマホを操作しながら電車に乗れる(笑)。
Q:スマホ?日本では電車の中でほとんどの人がスマホをいじっていますが。
A:パリの電車の中でスマホを人前に出したら、誰かがすぐ手を伸ばして盗られてしまいますよ。電車の中ホはカバンの中にしっかりしまうのがパリでは鉄則です。
Q:たしかにそうですね。
A:そんなわけで、日本がますます好きになって、日本から自国に戻ってきた時には、逆カルチャーショックになってしまうほどでした。
Q:旅行中、日本の食べ物で困ったことはありませんでした?お二人ともビーガン(絶対菜食主義者)だと伺っていますが…(以下、次号)

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仲睦まじいアルメアさんとローラさんはお二人とも物腰が非常にソフトで穏やか。日本での生活をとても楽しんでいる様子が伺えます。次回は日本旅行のエピソードに加え、住居探しや通勤事情など、現在の日本での生活について、ルクセンブルクとの違いを踏まえながらもう少しお話をしていただきます。 (文責:事務局)