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「人」コラムールクセンブルクの横顔 特別篇(4):イラストレーター リン・クズィンさん(Ms. Lynn Cosyn)

「人」コラムールクセンブルクの横顔
特別篇(4): イラストレーター リン・クズィンさん(Ms. Lynn Cosyn)

ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
ハートウォーミングなイラストで人気のリン・クズィンさん(Ms. Lynn Cosyn)が在日ルクセンブルク大使館の招聘で6月末までの2か月間、日本に滞在しています。彼女の作品展「Wild Calmness(ざわめき・しじま)」が杉並区の遊工房アートスペースStudio 1で6月18日から24日(正午から午後7時)、ルクセンブルク大使館でも6月25日、26日の両日(午前9時30分~正午、午後2時30分から午後5時)開催されます。日本の印象や今回の作品展についてリンさんにお話を伺いました。

事務局(以下、Q):こんにちは。
クズィン(以下、L):こんにちは、初めまして。
Q:お忙しい中、時間をとっていただいてありがとうございます。まずは、自己紹介をお願いします。
L:リン・クズィンです。イラストレーターで、ルクセンブルクからまいりました。2016年からイラストレーターとして活動しています。もともとは建築家で、ドイツのRTWH大学で建築を学び、卒業後はルクセンブルクの建築事務所で働いていました。家具、家の増築、その他の建築関連プロジェクトなど、様々なプロジェクトを手掛けましたが、この環境下で自分のアーチスティックな側面は十分に表現できないと気づき、イラストに転向しました。
Q:なるほど。建築のデザインは工学的な制約がありますものね。イラストは独学?
L:そうです。実は、建築家として働いた後、小学校で代行教員をしました。子供たちに教えるために大学に入り直して。代行教員時代、複雑な事柄を子供たちにヴィジュアルで説明することが本当に楽しかった。それで、自分の子供時代に熱中していた絵を描くことに少しずつ戻りました。
Q:そうなのですか!リン先生のイラスト、子供たちは喜んだでしょう?ほんとうに温かみのあるチャーミングなイラストですもの。
L:ありがとうございます。周囲の方の勧めもあって、ブログ(www.cosymore.com) をスタートしました。そうしたら、アメリカのライフスタイル雑誌からルクセンブルクの地図を書いて欲しいとの依頼があって・・・。
Q:突然?(笑)
L:はい、突然です(笑)。このプロジェクトの数週間後に別のプロジェクトも舞い込みました。それで、自営のイラストレーターとして活動することに決めました。それが2016年です。子供たちに教えることも大好きでしたが、ルクセンブルクの教員制度が少し変更され、卒業するためにさらに時間をかけなければならなくなってしまいました。正直、これ以上、(教師になるための)時間をかけることはしたくありませんでした。
Q:決断は大正解だと思いますよ。ルクセンブルクの教育界にとっては大きな痛手でしょうが(笑)。ところで、日本は初めてですか?
L:はい、初めてです。2016年の12月にルクセンブルク大使館からアートレジデンシィ・プログラムで2カ月間、東京に滞在しないか、とのご連絡をいただきました。びっくりしましたが、とってもワクワクしました。それで、今、こうして日本にいます。このプログラムを通じて、イラストレーターとしてのスキルを磨き、新しい芸術的方向性を試したいですね。それから色の使い方にも自信を深めて、最終的にはある種のリンの色(Lynn’s color)を見つけたいと思っています(微笑み)。
Q:日本の印象はいかがですか?
L:来日前は、東京は大都会で、ビルが立ち並ぶダイナミックな街というイメージがありました。もちろん、エネルギッシュなビッグシティであることは間違いありませんが、東京の穏やかさ(calmness)に強い感銘を受けました。緑(greenery)にも。
Q:穏やかさ、ですか?
L:ええ。東京は、人がいっぱいいる場所が多いでしょう、それなのに、混雑した場所にいても人々にある種の穏やかさがあります。そしてあらゆる場所に自然があります。路地のあちこちで鉢植えの花を見かけます。ルクセンブルクにはない光景ですね。それから夕焼けのピンクとオレンジにも感銘を受けました。街中を歩いて見つけたソフトな色使いは、作品のインスピレーションを私に与えてくれています。
Q:夕焼けの色合いは独特ですか?
L:そうですね。とてもきれい。日本で体験したソフトなフィーリングをイラストの色使いに反映したいと思います。
Q:今回は東京だけの滞在なのですか?
L:1週間ほど京都に行きました。あとは箱根ですね。今は、展示会の準備に集中していますので、東京の街中だけです。
Q:路地の散策以外には出かけない?
L:東急ハンズ、LOFT、世界堂に行きましたよ。非常にデンジャラスです(笑)。
Q:買い物が止まらない?(笑)
L:ええ(笑)。何時間でも過ごせますね。紙一枚選ぶのにも、いくつもの見本帳を見比べて。品揃えがすごいですよね。スーツケースも買い足さないといけないかもしれません(笑)。
Q:作品には紙も重要なアイテムですものね。
L:私はアクリルガッシュを使うので、より厚手の紙、例えば、水彩画用紙など、を使う必要がありますが。
Q:リンさんの作品について、少し教えてください。イラストだけでなく、写真も公開されて(https://www.instagram.com/cosymore/?hl=ja)いますよね?
L:写真は、私がインスパイアされた瞬間を切り取ってシェアするもので、イラストはフィーリングを表現するもの、でしょうか。私のイラストのスタイルは写実的なものではありません。身近な環境から直接インスピレーションを得て、魅力的かつユーモラスな方法で、日常の場面を単純化しています。
Q:おっしゃること、とてもよくわかります。リンさんの作品はトートバックや絵葉書にもなっていますが、日本で購入できますか?
L:オンラインショップ(http://www.cosymore.com/shop/)でご注文いただけます。実は、ちょっと品薄状態で・・・。夏に絵葉書の新しいラインナップをご紹介する予定です。今は東京におりますもので。
Q:ああ、そうですよね!東京に滞在して、その他に感じたことはありますか?
L:お会いする方が皆、とってもラブリーです。礼儀正しくて、友好的で、温かくて。今回の滞在は自国の文化、カルチャーを自問する機会にもなりました。
Q:そう言っていただけると日本人として嬉しいです。最後にLIEFの読者の方々にメッセージをいただけますか?
L:イラストは電子デバイスを使うこともかなりあるのですが、今回の展示会では手書きのオリジナルワークをお見せしたいと思います。お時間があれば是非、遊工房や大使館での展示会に足をお運びください。
Q:展示会、楽しみにしています。今日は本当にありがとうございました。
L:こちらこそ、ありがとうございました。
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優しくて穏やかな語り口のリンさんは、彼女が生み出すチャーミングでユーモアあふれるイラストとまさにシンクロ!どんなお子さんでしたか?とリンさんにお伺いした所、母が申すには、とても恥ずかしがり屋で絵をずっと描いている子だったそうです、との由。日常の一場面を単純化し、私たちをほっこり、笑顔にさせるイラストの源は彼女のパーソナリティと感受性に負うものだと思いました。貴重なオリジナルワークを見る機会ですので、皆様、展示会に是非お越しくださいね。 (文責:事務局)