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「人」コラム ‐ ルクセンブルクの横顔 第25回:二コラ・リバーさん (Mr. Nicolas Libar) ― 前編

「人」コラム ‐ ルクセンブルクの横顔 
第25回:二コラ・リバーさん (Mr. Nicolas Libar) ― 前編

ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
今回ご登場いただくのは、昨年9月から交換留学生として一橋大学に在学中のニコラ・リバー(Mr. Nicolas Libar)さん。初来日の印象や日本のキャンパスライフについて色々とお話を伺いました。

事務局(以下、Q):こんにちは、先日のルクセンブルク大使館でおめにかかりましたよね?
リバー(以下、N):はい、ナショナルデーのレセプションで。
Q:こんにちは、お時間をとってくださってありがとうございます。改めまして、宜しくお願いします。
N:こちらこそ、宜しくお願いします。
Q:まずは、自己紹介をお願いします。
N:二コラ・リバーです。ルクセンブルク出身の22歳で、ウィーン大学(Universität Wien)で政治学(Political Science)と日本学(Japanology)を学んでいます。ウィーン大学からの交換留学生として昨年9月に来日し、今は一橋大学に通っています。
Q:ウィーン大学での専攻はダブルメジャーなのですか?
N:いえ、専攻は政治学です。日本学は副専攻ですね。
Q:日本学はどんなことを学ぶのですか?
N:言語、文化、歴史、それから科学のリサーチの方法とか、色々ですよ。
Q:ああ、包括的な学問なのですね。でも、そもそも大学で日本学の授業を受けようと思ったきっかけは何だったのですか?
N:もともと日本に興味があって・・・。
Q:もともと?しつこいですけど(笑)きっかけ、モチベーションは?たまたま近所に日本人がいたとか、漫画、アニメが好きだったとか・・・。
N:7歳から柔道を習いはじめたので。
Q:柔道ですか?ルクセンブルクで?
N:そうです。柔道は人気があるのですよ。オリンピックで活躍したマリー・ミューラー(Marie Muller)選手もいますし。
Q:あ、ロンドンオリンピックで5位に入賞した選手ですね。美人アスリートとして話題になりました。二コラさんは今も柔道を?
N:はい、続けています。一橋大学でも柔道部に入部しました。
Q:すごい!もしかして、黒帯?
N:講道館柔道の初段です。
Q:なるほど。今回が初めての来日ということですが、すでに柔道や日本学で日本については良くご存じなのですね。想像と違った点やカルチャーショックはありましたか?
N:カルチャーショックはなかったですね。想像していたよりも「普通の国」という印象でした。みんなが「カワイイ」コスチュームを着ている訳ではない、と(笑)。僕が見ていた日本についてのビデオやドキュメンタリーは日本のある面を大げさに映す傾向があったみたいです。
Q:そうですね、違う面を映すほうが画になるから・・・。
N:実は僕、小さな頃から魚がダメなんです。刺身も焼き魚も無理。日本に来る前は食生活で苦労するかな、と覚悟していたのですが、大丈夫でした。肉料理もいっぱいあるから(笑)。
Q:お気に入りの肉料理は?
N:とんかつ、それからすき焼き。美味しいですよね!
Q:普段は外食が多いのですか?
N:そうですね。寮には共有のキッチンがあって、料理も少しはしますが、フライドポテトとかパスタとか、本当にシンプルなものを作るくらいで、ほとんど外食です。お昼は大学のカフェテリアを良く利用します。
Q:キャンパスライフのことは後で詳しくお聞きしたいのですが、日本行きを決めたとき、ご家族の反応はいかがでしたか?
N:両親はとてもエキサイトしていました。すごく喜んでくれて、4月に両親と兄が日本に来てくれましたよ。この夏は別の兄も日本に遊びに来る予定です。
Q:それは素敵ですね。二コラさんは何人兄弟なのですか?
N:男3人で、僕は一番下です。
Q:お兄さんがいらっしゃる時には、色々な場所に案内されると思いますが、二コラさんが東京以外で今までに訪れた場所はありますか?
N:関西地方と長野県に行きました。関西は大阪と奈良の観光旅行で、長野ではスキーとスノーボードをしました。
Q:スキーは得意?
N:いいえ、生まれて初めてスキーをしました。スノボーも初めてでした。
Q:いかがでしたか?
N:難しかったですね、スノボーは、スケートボードをしているので、感覚がすぐに体得できたのですが、スキーでは悪戦苦闘で(笑)。でも、とても楽しかった!
Q:なるほど。スケボーは得意なのですね?
N:得意というか・・・日常的に使っています。便利なので。
Q:え、日本でも?
N:はい。今日も(笑)。
Q:(二コラさんの持ち物をみて)あ、本当だ!通学にも使っているのですか?
N:そうです。寮は駅から離れた場所にあるので、スケボーは重宝しています。時間が節約できますから。それから日本はウィーンよりずっとスケボーがしやすいです。路面はフラットでスムーズですし、道の真ん中に荷物がドン、と置かれていたりすることもない。通行する人達が適度な距離感を保っていて、道を譲ってくれたりもする。僕が日本にきて感心したことのひとつに、日本の人達の他者に対する気遣いがあります。公共交通機関をきちんと列をつくって待つ。階段の上り下りの方向の規則正しさ。それから電車に乗る時にバックパックを前にする。これって、他の人を尊重している表れだと思います。
Q:そうですね。狭い空間で快適に過ごすための知恵だと思います。列を作ることが好きな訳では決してないのですが(笑)。階段の上り下りも、方向が同じなら人にぶつかることはないでしょう。
N:日本ではごく普通かもしれませんが、ヨーロッパはそうではないので・・・だから、スケボーに乗るのは日本の方がずっと安全です(笑)。
Q:その他に感じた違いはありますか?
N:そうですね、公共交通機関がすごく効率的で時間通りでしょう。あとは車がピカピカで綺麗なこと。
Q:車?
N:はい、ウィーンやルクセンブルクでは埃まみれの車が多いですよ。そんなに綺麗にしていない。
Q:言われてみればそうかもしれませんね。(以下後編に続く)

***

落ち着いた物腰の二コラさん。論理的な話しぶりからも、てっきり大学院生だろうと思っていたら、まだ若干22歳!(我が息子と比較して)日本とヨーロッパの若者の成熟度の違いに思いをはせてしまいました。が、目をキラキラさせながらスケートボードの話に興じる彼を見て、日本もヨーロッパも本質的には同じなのだな、と考えなおしました。次回は一橋大学でのキャンパスライフを中心としたお話をお届けします。 (文責:事務局)