ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
今回も交換留学生としてルクセンブルク大学で1年間学び、この9月に帰国したばかりの藤原尚之さんにルクセンブルクでのキャンパスライフを中心に色々とお話を伺います。
事務局(以下、Q): さて、藤原さんはルクセンブルク大で「もの」と「機会」を沢山もらったとのことですが、「機会」について具体的に教えていただけますか?
藤原(以下、F):まず、企業の方々の前でプレゼンする機会が数多くありました。先ほども申し上げましたが、学生と社会人の距離が近く、実社会とのつながりが非常に強いです。それから、学校の中にインキュベーターがいて、起業やアイディアの実現について意見を聴ける人がいます。あと、学校主催でストラスブールの市議会に行くツアーもありまして、参加してきました。費用はすべて大学持ちで、なんと、フレンチのフルコースまで用意されていました。
Q:なるほど。アカデミックな面だけでなく実践面に直結するプログラムも充実しているのですね。藤原さんにとってルクセンブルク大学の魅力はその他にありますか?
F:学食です。(と、即答)。一番、恋しいかも。
Q:美食の街、ルクセンブルクに恥じないクオリティですか?(笑)
F:はい、クオリティもボリュームも。もう、日本の学食には行けなくなるくらい。(笑)
Q:それは、是非、詳しく伺いたい(笑)
F: メインプレートが3.5ユーロで、これは日替わりで常時5種類くらい用意されています。バラエティも豊かで、ハンガリー料理、ルクセンブルク料理、スペイン料理、等々。ベジタリアン用のメインプレートも必ずありました。プラス0.5ユーロでサラダが盛り放題。それから、デザートも0.5ユーロでした。本当の値段は12ユーロなのですが、差額分は政府が出してくれているので、クオリティの高い料理を安価で楽しめました。
Q:羨ましい・・・。藤原さん、もしかして凄く食いしん坊ですか?
F:美味しいもの、大好きです。もちろん、料理を作る事も大好きで、ルクセンブルクでも自炊していました。向こうで炊飯器買って、ご飯を炊いて。友人にお寿司とか玉子丼も振舞いました。結構好評でしたよ。作った料理を色々とインスタグラムにアップしていたら、日本食の作り方を教えてほしいとの連絡が来て、教えたりもしました。欧州投資銀行にお勤めのフランスの方でしたけれど。
Q:おお!その他にはどんな料理を作ったのですか?
F:出汁茶漬け、ギョーザ、大根とわかめのサラダ、漬け丼・・・。
Q:マグロの?ルクセンブルクには海がないですよね?
F:ルクセンブルクにはクオリティの高い食材が集まっていますよ。例えばサバとか。オーガニックの生わかめもありましたし。以前、フランスに行った時にブルターニュのスーパーマーケットを覘いたのですが、ルクセンブルクではブルターニュで見た魚よりも格段に良い魚が手に入ります。きっと高くても良い物を求める人が多数いるからなのだと思います。
Q:ああ、なるほど。食材でメイド・イン・ルクセンブルクはあるのですか?
F:ジャガイモ、ヨーグルトなどの乳製品でしょうか。食材と言えないかもしれませんが、メイド・イン・ルクセンブルクで外せないのはワインです。これも恋しい。凄く美味しいですよ。
Q:同意します!ルクセンブルクのワインは、日本ではなかなか手に入らないですけれど、本当にきりっとして美味しいですよね。私見ですけれど、和食にとても合うと思います。
F:そうですね。本当に美味しいですよね。ワイナリーを訪ねて。色々試飲することも楽しかったです。
Q:藤原さんは本当に充実した日々をルクセンブルクで過ごされたのですね。
F:はい、世界中の友達ができましたし、社会人の方とも仲良くなれました。
Q:住んでみて、藤原さんのルクセンブルクに対する印象は?
F:ルクセンブルクに帰ると家に帰ってきた、という感じがします。忙しい世界とは無縁というか、実は違うのでしょうが、人々に余裕が溢れている、という印象です。
Q:ルクセンブルクのお薦めの場所は?
F:そうですね・・・。ワイナリーをふらっと訪ねるのがお薦めです。それから旧市街のグルント(低地)の橋から見る景色は綺麗ですよ。高低差がかなりありますけれど、一度下ってもエレベーターですぐ昇れますし。2、3日あればシティを回ることができますので、是非、ルクセンブルクに足を踏み入れていただきたいです。それから、ルクセンブルクの空港を使ってみてほしいです。本当に便利なので。空港自体がシンブルで、到着してから10分でゲートに着きます。セキュリティもしっかりしているし、ラウンジはコーヒーもクレマン(シャンパーニュ製法で作られた発泡性ワイン)も何でも揃っているし、市内へのアクセスも至便で。車で15分くらいで空港から市内に着きます。
Q:わかります。ルクセンブルクの空港はとても評判が良いですね。残念ながら日本からの直行便はありませんが、ヨーロッパの各空港からのアクセスは充実していますよね。ちなみにLux Airの機内食も、すごく評判が良いです。ベンチャー企業のトップとして、世界中を飛び回っている私の友人は、ルクセンブルクの空港の落ち着きというか静けさと、Lux Airの機内食(特にパン)のクオリティに感激していました。
F:はい、本当に。
Q:さて、1年間の留学を終えて、これからの展望は?就職活動中ですか?
F:いえ、ルクセンブルク滞在中に就職先は決まりました。
Q:日本企業?
F:米国のHRテックの企業の日本支社です。ルクセンブルク滞在中に3回のオンライン面接を経て、日本のトップの方の思いも伺って。ここの会社で自分のキャリアをスタートしようと思いまして。
Q:では、ロングスパンではHR以外の選択肢も考えているのですか?
F:知的好奇心が強いので、どんな領域でも飛び込んでみたいです。そして、いつかヨーロッパで完全ベジタリアンの和食レストランのチェーン展開をしたいですね。
Q:面白そう!是非、実現してくださいね。
F:ありがとうございます。
Q:今日はありがとうございました。
F:こちらこそ、ありがとうございました。
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食や文化、そして様々な人々との交流をルクセンブルクで満喫した藤原さん。来年からは社会人一年生の生活がスタートするわけですが、ヨーロッパでの和食レストランチェーン経営という目標に向かって、様々な経験をご自身の中に取り入れているのだろうな、と思いました。これからの活躍がとても楽しみです。(文責:事務局)