ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
今回も、ルクセンブルク大使館で11月中旬までインターンとして勤務した、ハンガリー生まれ、ルクセンブルク育ちのグレータ・センドレイさん(Ms. Greta Szendrei)のお話を伺います。
事務局(以下、Q):ところで、グレータさんが東京以外で訪れた場所はありますか?
グレータ(以下、G):京都と日光は行きました。関西や九州は面白そうだな、と思いますが、実は東京にすごく惹かれています。なんだかすごく安心するのです。地下鉄の乗り方もマスターしたので、都内のあちこちを訪ねています。
Q:地下鉄は便利ですよね。でも、慣れるまで大変だったのでは?
G:ビッグ・チャレンジでした。(笑)地下鉄の駆け込み禁止のアナウンスはとても面白い、と思いました。
Q:そうですね。整列乗車にご協力を、とか、駆け込みはご遠慮ください、とか、降りる方を先にお通しくださいとか(笑)。細かなアナウンスは日本独特ですよね。
G:本当に(笑)。
Q:お住まいはどちらですか?
G:千駄ヶ谷です。新宿や渋谷・原宿にも近いですし、都心なのに落ち着いた場所ですね。私は地下鉄を駆使して(笑)銀座や日本橋、丸の内にも行きますが、原宿と日本橋ではいる人が違いますね。
Q:年齢層とか?
G:ライフスタイルが違うと思います。私見ですが日本橋は東京の中でもとても美しいエリアだと思います。
Q:たしかに、独特の風情がありますね。お住まいはアパートですか?
G:シェアハウスです。キッチンが共有なので、お喋りしたり一緒に料理を作ったり。一人で住むよりも寂しくないのがいいですね。
Q:上智大学に留学していた時は?
G:寮生活でした。ここでの生活も素晴らしかったです。他の寮生の立ち振る舞いから学びました。玄関でどうやって靴をぬぐのか、とか(笑)。寮の大浴場も大好きでした。温泉はいいですよね、リラックスできるし、何より寒いときにはベストです。
Q:同感!私はアメリカの大学の寮に住んだことがあるですが、シャワーのみだったので、熱いお風呂が本当に恋しかった。その反動か今、しょっちゅう温泉やスーパー銭湯に行っています(笑)。
G:日本に住む特権ですね(笑)。半面、日本は台風や地震がありますけれど。
Q:体験済みですか?
G:はい。台風は3、4回かな。地震は私、かなりセンサーが発達しているようです。先日シェアハウスにいた時にかすかな揺れを感じたのですが、一緒にいた他の人達は平然とお喋りし続けていて、あれ、私だけが感じているのかな?と。後で調べてみたら確かに地震でした。ルクセンブルクでは地震はまったくないので。
Q:地震がないということは恵まれていると思いますよ。グレータさんにとってルクセンブルクの強みは何だと思いますか?
G:多様性だと思います。様々な人々、言語、そして文化があることが一番の強みだと思います。ですが、自国の文化もきちんと息づいている。大使館での仕事を通じて、私はルクセンブルクを再発見しました。フレッシュな目で自国を見て、より広く、よる深く探求する機会を得たことに感謝しています。
Q:確かにルクセンブルクは、様々なルーツを持つ人々が暮らす、マルチカルチャー、マルチリンガルな国ですね。日本は大雑把に言うとモノカルチャー、モノリンガル。
G:日本の強みは新しい試みをすることではないでしょうか?イノベーションに取り組んで生活を便利にしている。物事をリオーガナイズすることに長けていると思います。地下鉄をはじめとして、非常に組織化されていますよね。こんなに沢山の人がいるのに各人が自分のスペースをちゃんと確保しているのはミラクルです。それから、安全性も日本の強みですよね。日本はとても安全だと思います。人々はとても親切ですし。ある建物を探していた時に通りがかりの方がわざわざその建物の前まで一緒に行ってくれたのには、本当に感激しました。ヨーロッパでは人々は自分のことに精一杯で、そのような親切は、ほぼ期待できません。
Q:日本のことをそう見てくださって嬉しいです。もうすぐ大学院をご卒業されるのですが、将来はどのようなキャリアを考えていますか?
G:そうですね。 まずはルクセンブルクに戻って、家族と会って…。実は、その後のことは、学業を続けるか、仕事をするか、まだ考え中なのです。ひとつはっきりしているのは、ルクセンブルクに戻ったら、自分の国を再探検することですね。さっきも申しましたが、新鮮な目で自国を探求したら、そのありがたみが改めてわかると思います。大使館でルクセンブルクの様々な場所や側面をリサーチしたことで、自国に対する新たな興味がわきましたし、私が得た知識を他の方々と共有したいな、と思っています。
Q:それは素晴らしいですね。特に探求したいフィールドはありますか?
G:ルクセンブルクのアート・シーンです。非常に興味深い活動をしているアーチストがたくさんいますよ。
Q:なるほど。ルクセンブルクのアーチストさん達が日本に滞在して創作活動をしているプログラムもありますね。
G:はい。素晴らしい取り組みだと思います。もっと広めたいですね。
Q:それでは、最後にLIEFの読者の方々にメッセージをお願いできますか?
G:東京で働く機会を得たことで、私はルクセンブルクの歴史や文化にもっと興味を持つことができました。海外に行くということは、外の世界を教えてくれると同時に自分の国について教えてくれる、自国に改めて感謝する良い機会でもあると思います。色々な経験を重ねていただきたいと思います。そしてルクセンブルクにも是非いらしてください。
Q:グレータさん、本日はどうもありがとうございました。
G:こちらこそ、ありがとうございました。
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地下鉄に温泉、東京探訪。日本のカルチャーを堪能しながら、実はグレータさんの日本でのインターンシップの一番の収穫は、ルクセンブルクに対する新たな興味と感謝の再認識だったことに感銘しました。他者を知ることは自分自身を見つめることでもあります。グレータさんのこれまでの、そしてこれから培う知見が多くの人々に伝わることを楽しみにしています。 (文責:事務局)