「人」コラム ‐ ルクセンブルクの横顔
第7回: サブリナ・オリビエリ・戸澤さん (Ms. Sabrina Olivieri Tozawa) ― 前編
ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
今回、登場いただくのは、ルクセンブルクの伝統行事についてLIEFのウェブサイトに定期的に寄稿してくれているサブリナ・オリビエリ・戸澤さん。夏休みを利用して日本に滞在中の彼女に早速インタビューしてきました。
事務局(以下、Q):こんにちは!いつも興味深い記事をLIEFに寄稿して下さってありがとうございます。ルクセンブルクの伝統について凄く勉強になります。
サブリナ(以下、S):こんにちは!あの記事を楽しんで書いているので、そう言っていただけると嬉しいです。
Q:月ごとに伝統を紹介してくれていますが、調べるのが大変ではないですか?
S:いえ、取り上げているトピックスは、ルクセンブルクの人なら大抵皆が知っている一般的な行事なので、書くのはそんなに大変ではないのですよ。ネタを思いついたら、忘れないようにスマートフォンに入れていますけど。
Q:そうですか。事務局では、この情報をもっと色々な人に伝えたいと思いましてサブリナさんの投稿の和訳版もLIEFのウェブにアップしています。
S:ありがとうございます。
Q:それでは、インタビューを始めましょう。まずは自己紹介をお願いします。
S:はい、サブリナ・オリビエリです。年は35歳で、ルクセンブルクの南部、エシュ・シュル・アルゼットの出身です。2007年に初めて来日して、去年、ルクセンブルクに戻りました。
Q:今回の滞在は1か月くらいの予定ですか?
S:はい、そうです。夏休みの休暇で。4歳の息子と一緒に、夫に会いに(笑)。夫は日本人で、東京でサラリーマンしています(笑)。彼は今年、既に2回ルクセンブルクに来てくれたので、今回は私たちが日本に来る番。日本の夏の気候は、私にとって、ちょっと厳しいですけど(笑)。
Q: そうですね、暑さと湿気は、ずっと日本に住んでいても厳しいですもの。ご家族のことは後でもう少し伺いたいのですが、まずは、サブリナさんが日本に来たきっかけを教えてくださいますか?
S: 当時、パリの大学院でインターナショナル・リレーション、国際関係を学んでいまして、修士号を取得するためにはインターンをしなければならなかったのです。それで、在日ルクセンブルク大使館で3か月インターンをしました。それがきっかけ。ダブル・デグリーでスペイン語も専攻していたので、スペインの大使館などにも申請しましたが、日本が受け入れてくれたので。
Q: では、当時すでに日本語が出来た?
S: 大学時代に日本語をちょっと学んだので、まあ、大丈夫だろうと思ったのです。でも、日本にやってきたら私の日本語は出来るうちに入らないと実感しました。まったくダメ(笑)。インターンを終えて、一度帰国して学位を取得し、10月にまた日本に来ました。
Q: そうですか。
S : 日本語をブラッシュアップしなければと思ったので、3か月、日本語のインテンシブ・コースに通いました。それから去年までずっと日本。
Q: わ、頑張り屋さん!日本でのお仕事は?大使館?
S: いえ、2008年4月から翻訳会社に入社しました。翻訳やプルーフリード(校正)の仕事です。フランス語、ドイツ語、たまに英語。
Q: 翻訳会社ですか!なるほど。ルクセンブルクの人達は皆さんマルチリンガルですけれど、サブリナさんは一体、何か国語が出来るのですか?
S: ええと、7か国語ですね。ルクセンブルク語、ドイツ語、フランス語、英語、スペイン語、日本語、それからイタリア語。私の祖母はイタリア人です。苗字からもおわかりになると思いますけれど。私は言葉、言語が大好きです。
Q:インターナショナルですね。
S:まさにルクセンブルクって感じでしょう?
Q:日本語は別系列の言語ですね。
S: ええ。エキゾチックな言語。大学では中国語と日本語のコースがあって、日本語はベーシック・クラスがあったので、日本語を選んだのです。その当時は、こんなに深く日本と係ることになるとは思っていませんでしたが(笑)。
Q:ホント、人生の展開って予測がつきませんよね。そこがまた面白いのですけれど。
S:そうですね。
Q:2007年から昨年まで日本で生活されて、何が大変でしたか?
S:はじめは、やはり日本語もあまりできないし、習慣も違うので戸惑うことが多かったです。学生でしたので、学生用の定期が購入できると思ったのですが、日本の学校に在籍していないとダメだと言われまして、「私はフランスの大学院に在籍していて、今、インターンで日本に来ているので学生定期をお願いします」と主張したのですが、認められませんでした。正直、「何で?」と思って納得できなかったです。それから「モツ」にショックを受けました。
Q:「モツ」ですか?
S:はい、「モツ」です。ホームステイ先のお母さんの自家製。
Q:え?
S:自分の家でモツを調理するのは、珍しいでしょう?とにかく、初めて目にしたとき何なのか分からなくて。「まあ、食べてみて。モツだよ」と言われて口にしたのですが、ちょっと無理でした。それで、お母さんに「ごめんなさい、これはあまり好きではないです。」と断って残しました。次の日、大使館で「モツ」って何ですか?と聞いて、すごいショックを受けました。今も「モツ」はダメです。あと納豆もダメ。焼肉や神戸ビーフは大好きですが。
Q:では、日本での食生活は、どちらかというと洋食系?
S:日本の食べ物も色々食べますよ。私、もり蕎麦が大好物です。
Q:お蕎麦ですか!通ですね。ルクセンブルクに戻られて恋しい味は他にありますか?
S:お豆腐ですね。息子はお豆腐が大好きなのですけれど、ルクセンブルクでは美味しいお豆腐が手に入らないので。日本のお豆腐が一番美味しい。
Q:なるほど。その他に初めて日本に来た時、驚いたことはありますか?
S:そうですね、温泉にびっくりしました。今は大好きですけど。露天風呂も、温泉につかって雪を見るのも、とても好きです。
Q:雪見風呂!ますます通ですね。 先ほど、息子さんが日本のお豆腐が大好きとのお話がでましたが、ご出産の時は?ルクセンブルクに戻られたのですか?
S:いいえ、日本で。ごく普通の病院で、日本人の先生と日本語で話して、ごく普通に生みました。
Q:そうですか!今、「普通」と仰いましたが、かなり珍しいケースだと思いますよ。
S:そうでしょうか?うーん、そうかもしれませんね(笑)・・・(以下、次号)
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4歳の息子さんを育てながら、フルタイムのお仕事もされているアクティブなサブリナさん。次回は、ルクセンブルクでの育児やワークライフバランスについて、サブリナさんから見たルクセンブルク人や日本人の気質についてもう少し詳しくお話を伺っていきます。どうぞお楽しみに! (文責:事務局)