「人」コラム ‐ ルクセンブルクの横顔
第10回: ティエリー・ウォルターさん (Mr. Thierry Walter) ― 後編
ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
前回に引き続き、登場いただくのは、上智大学の大学院に留学中のティエリー・ウォルターさん。日本語をしっかり学ぶ傍ら、大学のサークル活動にも積極的にかかわり日本での生活を多いにエンジョイしています。今回は日本でのキャンパス・ライフを中心にお話を伺っていきます。
事務局(以下、Q):ティエリーさんは、大学で2つのサークルに属しているということですが、サークルの活動内容について、教えていただけますか?
ティエリー(以下、T):はい。「国際交流サークル」と「料理」サークルに入っています。「国際交流サークル」は週3回ランチミーティングをして、色々な話をします。ランチミーティングといっても、教室に集まって、ごく普通にお弁当を持ち寄ってというもので、自分で作ったお弁当とか、コンビニ弁当とかを食べながらお喋りする場です。ルクセンブルクのことを良く訊かれますので、自分の国を紹介する良い機会ですね。
Q:どんな事を訊かれます?
T:「どこにあるの?」とか。「何語を話すの?」とか。そうそう、ルクセンブルクは国ではなくて、街だと勘違いしていたメンバーもいました。「どこの街?」と訊かれたことあります(笑)。
Q:残念ながら、ルクセンブルクは多くの日本人にとって、まだ「知られざる国」ですね。ヨーロッパにあることは何となく理解している、けれども具体的な位置は良く分からない。私も「オランダの隣にあるのでしょう?」と訊かれたことがあります。その方は、学校で習ったベネルクス3国のイメージが頭にあったようです。「ドイツとフランスとベルギーの隣で、オランダは違うのですよ」とお答えすると「そうなの!?」と驚いていました。どうやって行くのか、何があるのか、も謎(笑)。だからこそLIEFでルクセンブルクについての色々な情報を発信していく意義があると思っています。
T: はい、僕も、いつか日本の人達にとって、ルクセンブルクが例えばアメリカとかドイツなどのように、良く知られている国になってほしいと思います。だから、サークルの仲間がルクセンブルクに興味を持ってくれるのが嬉しいです。ささやかですけれど、情報が拡散できるでしょう。
Q:その通りですね。人との繋がりを通じて、ある国に興味を持ったり、好きになったり、という事、多々ありますもの。
T:ええ。ある日本人が、あるルクセンブルク人に会った時、そのルクセンブルク人個人の印象がルクセンブルク全体の印象を左右すると思います。逆もまた然りですけれど。
Q:もう一つのサークルについても教えてください。「お料理」サークルって、料理学校みたいな感じ?
T:まず、メンバーが各々、季節にあった料理を考えます。例えば、ハロウィーンの時期にはカボチャのカレーとか。そして、そのレシピをネットにアップします。そうすると、それぞれ作ってみたい料理を投票して、上位3つが選ばれます。そして、皆でクッキングスタジオに集まって、そのレシピを3つのグループに分かれて実際に作ります。最後に試食。
Q:わ、オリジナル・レシピなのですね。面白い!メンバーの男女比は?女性のほうが多いのかしら?
T:男女半々ですね。グループもその時々で変則的です。とっても楽しいですよ。
Q:そうでしょうね。聞いているだけで楽しそう!色々なメンバーとの交流もできますしね。
T:はい。
Q:日本の学生との交流を通じて、ルクセンブルクのアイデンティティを感じることはありますか?
T:はい、あります。公用の言語が3か国語あって、歴史文化的にも、やはり他の国とは違うアイデンティティがありますから。ただ、僕は交換留学でイギリスにも滞在したことがあるのですけれど、ヨーロッパにいる時のほうがルクセンブルク人であることを強く意識していたかもしれません。日本ではルクセンブルクをヨーロッパの中のひとつの国なのだな、と感じます。やはりアジアに比べると、他のヨーロッパ諸国との共通点は多いと思います。
Q:なるほど。授業のほうはどうですか?カリキュラムは大変ですか?
T:たしかに密度の濃いカリキュラムですけれど、大丈夫です。一生懸命、漢字を覚えています。漢字だけでなく、謙譲語の使い方とか、ニュアンスとか、まだまだ覚えなければならないことは沢山あります。授業もとても楽しいですよ。
Q:それは心強い。将来の計画は?どんな仕事をしたいと思っていますか?
T:できれば、日本で就職したいと思っています。そして日本でルクセンブルクをプロモートできる仕事に就きたいな、と。先日、大学で留学生のための就職セミナーがあって、日本企業の方々がブースを出展されたので参加してきました。
Q:ああ、就職説明会ですね。手ごたえはいかがでした?
T:色々ご説明いただきました。とあるロジスティックス企業さんは、まだヨーロッパには進出していないけれど、将来のハブとして、ルクセンブルクに興味があると仰ってくれて、物流の仕事もひとつの選択肢だな、と思いました。ご存知のようにルクセンブルクは物流のハブとして地理的に非常に恵まれていますから。プロフェッショナルとしての専門的知識を得られ、日本とルクセンブルクとの結びつきが更に繋がるための役割も果たせる仕事に就けると良いなと思います。
Q:なるほど。
T:いつかルクセンブルクで仕事をする時も、やっぱり日本をプロモートすることをしたいです。選択肢は色々あると思うので、色々と学んで準備したいと思います。
Q:そうですね、様々な職、様々なやり方で、結びつきを強める方法がありますものね。是非、両国のための大きな架け橋になってくださいね。今日はどうもありがとうございました。
T:こちらこそ、ありがとうございました。
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将来は日本とルクセンブルクをつなぐ橋渡しをしたい、と語るティエリーさん。若い世代の間で両国の理解が深まることは本当に素晴らしいと思います。上智大学でのサークル活動で、すでに国際交流に着々と実績を作っている彼の事、将来はもっともっと大きな輪を広げていってくれることでしょう。今から楽しみです。 (文責:事務局)