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「人」コラム ‐ ルクセンブルクの横顔  第36回:アルミア・セリモビックさん&ローラ・コンソリさん(Mr.Almir Selimovic & Ms. Laura Consoli) ― 後編

ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
今回も、三菱ふそうトラック・バス株式会社にお勤めのアルミア・セリモビックさんと彼のパートナーのローラ・コンソリさんのお二人にお話を伺います。

事務局(以下、Q):さて、ローラさんが日本を好きになったキッカケになった初めての日本旅行のことを教えていただきたいのですけれど、まず、食べ物で困りませんでしたか?お二人ともビーガンですよね?
ローラ(以下、L):初めて日本に来た時は私たち、まだビーガンでなかったのです。なので、お寿司とかお好み焼きとか、いろいろ食べましたよ、美味しかった。
アルミア(以下、A):そうです。ビーガンになったのは、たまたま見たテレビ番組がきっかけです。なんだか健康に良さそうだから、ちょっとやってみようか、という感じの軽いノリ(笑)で。
Q:あ、そうなの?
A:はい。やってみたら、本当に体調が良いので続けています。菜食主義は高血圧予防にも良いですよ。でも、おっしゃるように外食の時の選択肢は限られますね。2018年に再度、3週間ほど日本を旅した時はちょっと困りました。山形とか函館とか、色々まわったのですけれど、地方のレストランのメニューはほとんど日本語オンリーでしょう?何が入っているかわからない(笑)。
L:そうそう。結局、コンビニでおにぎり買って、それで夕ご飯を済ませてしまったりして(笑)。
Q:あらら・・・
L:残念ながら、地元のお料理を食べるチャンスはあまりなかったです。私たちに郷土料理についての知識があまりなかった事と、日本語オンリーのメニューの壁に阻まれました(笑)。
Q:英語のメニューがあったら助けになったかもしれませんね。お二人ともマルチリンガルでしょう?何か国語ができるの?
L:ルクセンブルク語、ドイツ語、フランス語、英語。
A:僕も。あ、あとボスニア語。僕のもともとのルーツはボスニアですから。
Q:そして、日本語も。
A:日本語は、まだカタコトなので、これから頑張ります。そういえば、この間、スーパーで日本の方と知り合いました。スーパーを出た時にその方が日本語で話しかけてきてくれて、友達になりました。英語をならいたいとのことなので、じゃあ、英語と日本語を交互に教えあうことができるね、と。
Q:それは良いアイディアですね。旅行に話を戻しますが、旅行中に困ったことはありましたか?
L:特にはありませんでした。日本のトイレに初めて入ったとき、ボタンが多くて戸惑ったことくらいかな。どのボタンがフラッシュボタンなのか、迷ってしまいました。今は大丈夫ですけれど(笑)。
Q:あ、確かにボタンは多い。ビデのボタンもおしり乾燥のボタンもあるし、洗浄も大と小がありますし。今の東京での生活で困ったことは?通勤ラッシュとかは大丈夫ですか?
A:大丈夫です。錦糸町のアパートから新川崎の会社まで通勤時間は1時間ですけれど、ほとんどの乗客が東京駅で降りるから、あとは座れるし。新川崎駅から会社までは会社のバスに乗ればよいので。
L:私はラッシュアワーには慣れることができないですね。満員電車はちょっと苦手です。
Q:私も満員電車はダメです(笑)。お住まいは錦糸町なのですか?
A:はい。
Q:会社の借り上げのアパート?
A:いえ、自分たちで探しました。
Q:それはすごい!海外から来た方が住まい探しでご苦労された話をよく耳にしますが、スムーズに?会社からのバックアップとかもなしで?
A:会社と提携している不動産屋さんを会社が紹介してくれたので、まずは、そこにコンタクトしました。ですが、見に行った物件があまり気に入らなくて・・・。レスポンスもゆっくりで次の下見は5日後とか言われて、もう自分たちで探そうと。アパートが決まるまでウィークリーマンションを借りていましたので、長引くとお金が余計にかかるでしょう。
Q:たしかに。
A:だから、ネットで調べて気になる物件を扱っている不動産屋さんにコンタクトしたら、レスポンスがすごく早くて。電話した数時間後には下見ができました。部屋の鍵はボックスの中にあるから、どうぞ自由に見に行って、と言われて本当にびっくりしました。ルクセンブルクではエージェントの立ち合いなしで、部屋を自由に見ることはあえりませんから。残念ながら、見に行った部屋は周囲の音がうるさかった。それでまわりの騒音が気になると言ったら、翌日に別の部屋を見せてくれて。その部屋を借りることにしました。そこの不動産屋さんの営業担当の方が流暢な英語で対応してくれたので意思の疎通もスムーズで、話が早かったのかもしれません。
Q:それはラッキーでしたね。でも、なぜ錦糸町を選んだの?
A:乗り換えをあまりしたくなかったので。通勤に便利ですし、暮らしやすそうだから。
Q:なるほど。休日はどのように過ごされているのですか?東京探索?
L:こちらに来てしばらくは、家具や生活必需品を買いにいったり、仕事がスタートしたりと、生活環境を整えることに時間を取られてしまったので、まだあまりあちこちに出かけていません。先日、渋谷のこどもの国の近くでマルシェがあると聞いて出かけたくらいかな。地元のスーパーではなかなか見つからない野菜を大量に買って帰ってきました(笑)。
Q:どんな野菜?
L:ケールとか、ルッコラ。バジルもポットで買いました。
Q:あ、私の家でも、鉢植えのバジルやタイムを庭先で育てて、美味しくいただいています。ハーブ系はスーパーで買うとかなりお高いから。
A:ケールはルクセンブルクでは日常でよく使う野菜なのですけれど、日本のスーパーで見つけるのは難しいから、マルシェに行って大正解でした。反対に地元のスーパーではルクセンブルクでは見たことのない野菜も沢山あって面白いです。
Q:例えば?
A:大根とか。
Q:確かに。スーパーには良くいくのですか?
A:はい。家で料理をしますし。あと、コンビニも行きます。コンビニで大福餅を買ったりして。
Q:あ、大福餅はビーガン規準で大丈夫なのですね。
L:はい、そうです。コンビニ、本当に便利ですよね。ルクセンブルクにはキオスクはあるけれど、コンビニはないです。あと、日本では夜遅くまでお店があいているでしょう。すごく助かります。ルクセンブルクと違う点ですね。日曜も買い出しができるし。
Q:ルクセンブルクでは日曜日に空いているお店は?
A:基本的に日曜日はお休みです。
Q:ああ、カソリックの国ですものね。今日は貴重な休日にお時間をいただいて本当にありがとうございました。日本での生活、これからますます楽しんでくださいね。
A&L:ありがとうございます。こちらこそ、ありがとうございました。

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ビーガン(絶対菜食主義者)のお二人にとって、食材のチョイスはとても重要だと思います。スーパーやコンビニを上手に使い、しっかりと生活している様子は頼もしい限り。情報検索のスキルを、お部屋探しやマルシェ情報のキャッチに役立てている事にも感心しました。謙虚でクレバーなお二人なので、次回お目にかかる時は、きっと日本語がものすごく上達していることでしょう。日本での日常生活をさらに楽しんで、日本をより知っていただけると嬉しいです。           (文責:事務局)