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「人」コラム ‐ ルクセンブルクの横顔  第39回:グレータ・センドレイさん(Ms. Greta Szendrei) ― 前編

ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
今回は、ルクセンブルク大使館で11月中旬までインターンとして勤務したグレータ・センドレイさん(Ms. Greta Szendrei)をインタビューさせていだだきました。

事務局(以下、Q):こんにちは。はじめまして。
グレータ(以下、G):こんにちは。グレータです。よろしくおねがいします。
Q:今日はお時間をいただき、ありがとうございます。まずは、自己紹介をお願いします。
G: グレータ・センドレイ、26歳です。現在はスコットランドのエジンバラ大学で比較文学を専攻しています。
Q:大学院で?
G:はい。マスターコースです。原爆投下をテーマに色々な作品を調べています。原民喜とか。
Q:原民喜!かなりディープですね。では、すでに広島には行かれたのですか?
G:いいえ、残念ながら、まだなのです。
Q:では、今回のインターン期間が終わってから?
G:そうしたいのですが、時間的に今回は無理そうです。インターンが終わってすぐ大学の卒業式があるので。
Q: あら、残念。そもそも、何故インターンシップを?
G:そうですね…。職務を経験したかったから、というのが一番の理由ですね。もともと日本が好きで、大使館の仕事にも興味がありましたので、外務省のインターンシップに応募しました。
Q:日本は初めて?
G:2度目です。2017年の秋から2018年の冬までの6か月間、交換留学生として上智大学に通いました。
Q:それで、日本語がお上手なのですね。
G:いえいえ、まだまだです。日本語を6か月勉強しましたが、細かなことを日本語言うことは難しいです。日本語でのコミュニケーションはチャレンジングですが、敬語の使い方とか、もっときちんと身につけたいと頑張っています。
Q:敬語はやっかいですよね、日本人にとっても。特に謙譲語は手ごわい。(笑)
G:本当に(笑)
Q:大使館でのお仕事はいかがですか?
G:期待していた通り、いえ、期待以上ですね。とてもオープンで、フレンドリーで。大使館の雰囲気がとても好きです。非常に良い職場ですね。
Q:仕事の内容について教えていただけますか?
G:主にリサーチを担当しています。トピックは多岐にわたります。国際関係についてのレポートもありますし、ルクセンブルクの製品や場所について詳しく調べることもあります。フランス語の文献をルクセンブルク語に翻訳もします。リサーチ以外にも大使館内でのイベントのお手伝いもします。大使館ではいつも何かが進行しています。世界各国の国を代表する方々がしばしば大使館を訪れます。そうした外交の専門家にお会いして、彼らから学ぶことができることは得難い経験ですね。
Q:それは素晴らしい機会ですね。
G:はい、本当に。
Q:グレータさんは、もともと日本がお好きだったとのことですが、何がきっかけですか?
G:地理的に遠い場所にある国で、エキゾチックなアイデアやカルチャーに惹かれました。アニメや漫画をずっと見ていましたし、食もとても興味深いです。オーストリアやハンガリーの料理に似ているメニューもあって。
Q:ハンガリー?
G:はい、私はハンガリー生まれで、15年前からルクセンブルクのシェンゲンで暮らしています。ハンガリーは私のルーツであり、今でも緊密に繋がっていて、毎年、夏にはハンガリーに行っていました。ハンガリーにもトンカツのような肉を揚げる料理、ラーントット・フーシュ(Rántott hús)があるし、グヤーシュ・スープ(Gulash soup)は麺なしのラーメンだと思います。
Q:わあ、面白い!お料理、お好きなのですか?
G:はい。ですから、スーパーマーケットに行くことも好きです。旬の食材、例えば秋ならサツマイモや栗、が綺麗に並んでいるのを見ることも楽しいですし、何よりスーパーマーケットの食材は日本人が何を食べているのか、日本人がいかに季節感を楽しんでいるのかを反映していますよね。食を通じて日本の方が生活の中で何を拠り所にしているのを感じさせてくれます。西洋料理をまったく違う食材を使って和風にアレンジすることもごく普通に行われているでしょう?
Q:例えば?
G:パスタ。日本ではイタリアやスペインで食されるオーセンティックなパスタを楽しむ一方で、刻みのりをかけたタラコパスタもごく一般的なメニューになっています。海藻類は西洋では珍しいですが、日本ではごく普通の食材なのが良くわかります。レシピに食材のフュージョンを取り入れて新しいメニューを作る。これは自分のアイデンティを保ちながら新しい事にチャレンジすることにも通じると思います。
Q:うーん、確かに。料理に限らず、日本人は発明より応用が得意かもしれない・・・。
G:日本は、古くからの伝統が脈々と存在している一方で、物事がどんどん革新されている。時にはカオスのようになるかもしれませんが、多様性の現れだと見ることもできると思います。 (以下、次号)

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流暢な日本語で挨拶してくれたグレータさん。おだやかで落ち着いた物腰で、日本に対する深い愛情と考察をお持ちなのが会話の端々に感じられました。食を通じて日本人の生活様式に思いをはせることは、比較文学の研究姿勢にも相通じるのではないかと感じ入りました。次回は日本での日常生活や将来の展望、日本とルクセンブルクの違いを中心にお話しを伺っていきます。 (文責:事務局)