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「人」コラム‐ルクセンブルクの横顔 第43回:小原ゆゆさん(Ms.Yuyu Obara) ― 前編 

ある国を語る時、歴史や文化、生活風習に加え、その国の人々は欠かせないファクターでしょう。人との交流は、国の印象にも大きく左右しますし、人を知ることで、その国への理解も一層深まります。このコラムは日本とルクセンブルク、双方につながりの深い方々を順次ご紹介していきます。
今回は、LIEF初のオンライン・インタビューを敢行、ルクセンブルク大学に交換留学生として約半年間在学し、先ごろ帰国された小原ゆゆさん(Ms.Yuyu Obara)のお話を伺いました。

事務局(以下、Q):こんにちは。初めまして。お時間いただきありがとうございます。
小原(以下、O):初めまして。今日はよろしくおねがいします。
Q:まずは、自己紹介をお願いします。
O: 小原ゆゆ、上智大学総合グローバル学部の4年生で昨年の9月から今年の3月までルクセンブルク大学に留学生として在学していました。ルクセンブルク留学前はルクセンブルク貿易投資事務所(LTIO)半年ほどインターンをさせていただきました。
Q:コロナの影響で帰国が早まってしまった、とお伺いしましたが?
O:はい。本来は7月までルクセンブルクに滞在する予定だったのですが、3月に上智大学から1週間以内に帰国せよという要請が来まして。日本に戻りました。
Q:1週間以内!大変だ。
O:すでにルクセンブルク大学の授業はリモートになっていまして、上智から他の国に留学している学生への帰国要請はもっと早かったので、そろそろ来るのかな、と予測はしていましたが。帰りの便で凄い事がありまして・・・。
Q:え?何があったのか、後ほど是非詳しく教えてくださいね。そもそも小原さんは何故ルクセンブルクに留学しようと思ったのですか?
O: もともと留学したいな、と思っていたのですが、ヨーロッパ旅行をきっかけに、欧州で学びたいという気持ちが強くなりました。私は上智大学では国際比較教育学のゼミで持続可能な開発を学んでいます。教育を通してどのように人々の価値観を変え、無理なくサステナブルな社会を構築することが出来るかということに興味がありました。ヨーロッパの古い町並みや建物を大切にしていることや、特にドイツなどで環境意識が非常に高いという点に凄く惹かれました。ルクセンブルクはヨーロッパの中心に位置していて、各国から色々な人材が集まっているし、上智大学と縁が深いので、ルクセンブルク大学への留学を決めました。
Q:上智大との交換留学生として留学されたのですね。
O:はい。実は、少し変則的な形での留学でした。上智大学からの交換留学生として英文学部で学ぶ一方で、「トビタテ!留学JAPAN」の多様性人材コースの奨学生でもあったので、そちらの活動として持続可能な開発についての講座を受講しました。この講座はCertificate for Sustainable Development and Social Innovationの認定が取得できる社会人公開講座で授業は夜間に行われます。
Q:そういう事例はルクセンブルク大ではごく普通のことなのですか?
O:いいえ。特殊でした。交換留学生が2つの系に在籍する例はルクセンブルク大でも初のケースとのことで、交渉を重ねて認めていただきました。
Q:大変だったでしょう? 世の東西を問わず、お役所とか大学とかは先例がない場合は中々動かない(笑)ですから。
O:はい、かなり(笑)。色々なオフィスを回りました。こちらではわからないからあっちにいって聞いてみて、なんて言われながら(笑)。ルクセンブルクに上智大のオフィスがあるのですが、上智大オフィスの松村さんに色々と助けていただいて、なんとかできました。
Q:それは素晴らしい。ガッツありますねぇ。社会人公開講座はベルバル(Belval)キャンパスで開催されていたのですか?
O:キルシュベルグ(Kirchberg)でした。
Q:バスで通ったの?
O:はい。ディファダンジュ(Differdange)の近くに住んでいましたので、1時間ほどかけて通いました。
Q:遠い!日本だと通勤・通学で1時間は珍しくないかもしれないけれど・・・。
O:そうですね。バスは30分に1本で、しかも遅れたりするので、授業に遅刻してしまったこともありました。「バスで通っているの?」とクラスメートに驚かれました。
Q:基本、車ですものね。
O:はい。授業が終わってクラスメートが車で送ってくれたりもしました。
Q:クラスは社会人の方がほとんど?
O:社会人も主婦もいて、多彩でした。 色々な立場、年齢の方達と一緒に学んだことも、すごく良い経験でした。私の親友はフランスに留学していたのですが、彼女の交友関係はフランス人の同年代の人達に限られていましたけれど、私の場合はルクセンブルクにお母さんが何人もできました。
Q:授業は?
O:課題が多かったです。
Q:日本の授業との違いは感じましたか?
O:学びの環境の違いを感じました。授業をすすめる中心が学生で、ディスカッションが盛んです。日本は先生のカリキュラムに沿って講義を拝聴するスタイルが一般的だと思うのですが、授業を「受ける」という形ではなく、議論に「参加」する。
Q:そうか、「参加」することが肝要なのですね。ディスカッションのテーマも学生が決めるの?

O:毎回、トピックは決まっていて、トピックにそってグループワークをしたり、発表したりするのですが、その中で興味深いポイントを先生が拾って、それをさらに進めてディスカッションしたりする、という形でした。
Q:英文学の授業もあるし、夜間講座もあるし・・・。忙しかったでしょう?
O:リズムに慣れるのが最初は大変でした。
Q:その他に大変だったことありますか?郵便物が届かなかったことがあるって以前、留学生だったからから聞いたことがあるのですが。
O:はい。郵便物が届かないこと、ありました。困ったことは、公共交通機関のキャンセルや遅延ですね。
Q:授業に遅れてしまう?
O:アナウンスされないので、周りの状況で察するしかなくて。ルクセンブルクで暮らし始めて間もない頃、工事のためにバスのルートが変更されていたのですが、そのアナウンスはなくて、まったく知らない場所で降りる羽目になりました。アプリでみても、モニターを見ても状況が掴めなくて。生活用品の買出しで大荷物を抱えていたので、どうしよう、と思いました。
Q:それは不安だったでしょう。食生活は大丈夫でしたか? (以下、次号)

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穏やかで落ち着いた話しぶりと楚々とした風貌。一見すると非常におとなしい印象なのにルクセンブルク大で2つの専攻をこなすという荒業をこなすバイタリティと適応力に溢れた小原さん。次回はルクセンブルクでの日常生活や帰国時の(とんでもない)出来事、今後の展望などを伺っていきます。 (文責:事務局)